ECLIPSE_202301_26-29
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利ではなかった。「望来騎手は〝(折り合いが)しんどい〟と言っていました」と、以前から見せていた課題は解決されぬまま。それでも、きっかけはすぐ訪れた。「2回目の芝の時、望来騎手の方から〝きょうは折り合いを専念して乗っていいですか?〟と言ってくれたんです」。そのサンシャインS。大逃げを打つ馬がいながらも、再び後方でじっくり待機。我慢することをしっかりと教え込んだ。前残りの展開もあり、結果は前を捉え切れず3着だったが、大きな収穫があった一戦だった。 「あの競馬が活きていると思います。ジャパンCを勝った後も、向こうから〝おめでとうございます、良かったですね〟と言ってくれて…。本当に望来騎手のおかげです」と、今のベースを築いた若武者に感謝する。6月のジューンS。オープン入りを決めたこのレースが一番印象に残っていると、渡辺調教師は語る。 「うれしかったですね。レースぶりも、ねじ伏せた感じがありました。そこまではどこまで本物なのかが分かりませんでしたが、〝秋はやれるぞ〟と確信しました」。中団で折り合い、外めから上がり最速で突き抜ける王道の競馬。2着に負かしたブレークアップは、のちにアルゼンチン共和国杯をV。メンバーレベルの高い一戦を小細工なしの競馬でモノにしたことで、一線級でやれる手応えを得た。大賞典をチョイス。重賞初挑戦が例年、強豪が集う伝統のG2となったが、この時、既に師は「タイトルが手に届きそうなところまで来ている」と、確かな手応えを口にしていた。当日は重賞馬が8頭いる中で、2番人気に。パドックでは+8キロでも、むしろシャープに映るほど。4カ月ぶりだったが、素人目にも抜群と一目で分かる仕上がりだった。レースはいつも通り、後方から歩を進める。春先の経験を活かし、鞍上・松山弘平騎手と呼吸をピタリと合わせた。余力十分に直線に向くと、前走同様に迷わず外へ。強く動かされる手綱、そして左ステッキに呼応するウィークポイントを克服し、挑んだ夏休みを挟み、秋の始動戦には京都かのように、ギアを全開に。漆黒に輝く馬体を揺らしながら、一気に差し切った。上がり3ハロンタイムは、メンバー最速となる33秒2をマーク。同2位が33秒7だったのだから、その末脚の異次元さがよく分かる。芝では全戦で上がり最速を計時、そして重賞制覇。その先のさらに大きな舞台での活躍も期待される、鮮烈な走りだった。迎えたジャパンC。パドックから落ち着き払った雰囲気で周回し、この時に指揮官は「意外とイケるのでは」と勝利を予感したそう。 「前日1番人気で、それまではプレッシャーがありましたが、気配がすごく良かったんです。案外、安心して見ていられました。春先までは〝カリッ〟とした感じだったんですが、京都大賞典の時からすごくおとなしくなりました。もともと周りに左右されないタイプで、どっしりしていたのが、この秋に輪をかけてそうなってきましたね」と精神面の成長が、自信の源だった。最終的には、単勝3番人気に支持されたヴェラアズール。初コンビのR・ムーア騎手は、五分のスタートから中団の後ろにポジションを選択した。道中は大事に、大事に。かつては課題だった折り合いも、これまでバトンをつないできたジョッキーが教え込んでくれたこともあり、許容範囲内に収まった。3角から仕掛ける馬が視界に入っても、動じない。手応えを残したまま、勝負の直線へ。しかし、行くところ行January 2023 vol.25228栗東トレーニングセンター(22年11月)22/11/27 国)ジャパンC-G1 東京 芝2400m─ジャパンカップ優勝─想像を超え続けるシンデレラボーイ ヴェラアズールが描いた道のり    

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