ランスの牧場が閉鎖したことが影響しました。当時、2人はシンボリルドルフ、ニホンピロウイナー、ミスターシービーの産駒をフランスに連れて行き、現地で育成して走らせようと計画したんです。しかし、その牧場がうまくいかず、経営難になりました。また、各軽種馬農協さんが、自分たちでセリ名簿の制作を始めたのも響きました」当時の状況を、松井陽明代表取締役社長に伺った。「当時からケイバブックとサラブレッド血統センターは競馬四季報の仕事でお付き合いがあって、ケイバブックの現社長である松井淳二と白井透さんが話し合い、引き受けることになりました。当時はとてつもない額の借金があったと聞いています。でも松井淳二は、サラブレッド血統センターにある貴重な血統データを残さなければいけないという、強い使命感がありました」ケイバブックグループに入って以降の変化を、□氏はこう話す。「白井透さんは血統評論家としても本人が全面的に競馬マスコミへ出るなど、良くも悪くもワンマンな体制でした。それがケイバブックの傘下に入ってからは、『週刊競馬ブック』(写真⑧)の編集作業をする中で、競馬主催者やクラブ法人の関係者、ライターさんなど、様々な方面の方と接して関係性が広がりました。また、ケイバブックとの連携で、データベースが効率化されたことも大きなメリットですね。ケイバブックには中央競馬の成績に関する豊富なデータが揃っており、弊社にある血統とケイバブックが持つJRAの成績をつ降は制作が止まっていました。白井透さんは〝それをもっと見やすい形にして、データとして残したい〟という使命と熱意がありました。それで、ファミリーテーブルの版権を持つフランスギャロに、第3巻を出したいと交渉したんです」では、イギリスで発刊された『ファミリーテーブル』第1巻の原書を保管している(写真⑤)。「原書には第3巻(写真⑥)を作る際、作業のために書き入れたラインマーカーが残っています(写真⑦)。当時、私は入社していたので、第3巻の制作に関わっていた専任の社員が、毎日コツコツと作業する姿を覚えています」記念として出版された、第4巻の編集業務を受託している。「第4巻では競馬主要国だけではなく、パートⅢ、パートⅣのほか、ロシアや南米など色々な国のスタッドブックの血統もつなげることになりました。私を含めた3名で世界各国のスタッドブックが揃っているイギリスのウェザビーズまで行き、1週間滞在して調査。南米にも別のチームが行き、調べました。近年の日本競馬には南米、特にアルゼンチンの血統馬が増加しています。注目する生産者が増えているので、お役に立てていると思います」株式会社ケイバブックの傘下にのグループ会社となった。その背景には、なにがあったのだろう。「バブル経済が崩壊し、白井透さんが弟の民平さんと共同経営していたフなんと、サラブレッド血統センター2003年には、JRA創立50周年1995年、株式会社ケイバブックなげれば、データは完璧になります。競馬新聞を作る上でも、血統データとうまく連携するようになりました」このように、サラブレッド血統センターが手掛ける出版物は競馬業界内のみならず、競馬ファンにとってもなくてはならない存在になっているが、牧場関係者などから強い支持を受けているのが、ホームページの『DATABOX』。特に『クラブ法人』情報には『クラブ法人今週の出走馬一覧』、『クラブ法人先週の出走馬競走成績』などが掲載されていて、各クラブの成績などが一目でわかるようになっているので、筆者もよく利用させていただいている。なお、クラブ法人生年別勝ち上がりランキング(現3歳世代)のキャロットクラブの勝馬率は、10月26日現在で0・606という高い水準となっDecember 2025 vol.28710「ハンドメイドでしかできない繊細さ、温かさを大切にしたい」と語る松井陽明代表取締役社長□一郎氏は勤続39年。白井透氏が率いていた頃を知るベテランの一人だサラブレッド血統センター制作・ノーザンテーストの種牡馬カタログ(当初は馬名表記が異なったようだ) ─日本競馬の血統を守り抜く─サラブレッド血統センターの功績と、これから
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