もっと返し馬から引っかかったり、乗りにくいところがあったのですが、ふわっと乗れるようになっていたんです」と、吉原騎手は本格化を感じた。しかしながら、好事魔多し。右膝の古傷に注意を払い、ケアしながらの調整に努めてきたものの、京成盃グランドマイラーズ優勝後に歩様が乱れ、反対の左前脚の種子骨靱帯を痛めてしまっていた。骨折を経験した人はわかると思うが、負傷箇所をかばうがゆえに反対側に負担が掛かり、故障を生じてしまうことがある。「今年の上半期はかしわ記念を大目標どしゃ降りの雨で1枠1番。地元の逃げ馬がいて、それが行けばうちは良い位置にハマるんじゃないかと思ったら、グイグイ来られてしまって、吉原騎手も引くに引けずという感じに…。でも、あのペースで逃げて4着に粘るんだから、力がある馬だなと再認識しました。その後なかなか勝てなくても、2024年は今の形にたどり着くことができた、収穫ある1年でしたね。瀬戸厩務員がしっかり馬をつくってくれるので、コンディションを高いレベルで維持できて、馬もどんどん良くなっていきました」昨夏はターニングポイントとなったトライアルレースで弾みをつけると、次走スパーキングサマーカップを連勝。10月、大井のマイルグランプリは出遅れて自分の形にもっていけず、かなり後ろからの競馬になってしまったが、それでも5着まで迫った。さて、次は浦和のゴールドカップか、園田の兵庫ゴールドトロフィーのどちらか、という二択になった。「浦和と園田ではコースのタイトさは変わらないのですが、園田は内をあけて走るので、そのぶん外差しが利く展開になりやすいのではないかと、斤量差はあっても兵庫の方を使うことに決めました。早めに動くいい形で、強い競馬になりました」高木マネージャーの分析は的確。すべてはS1制覇への道だったのだ。「移籍2戦目となった24年1月の川崎マイラーズのレースぶりも見ていたのですが、ワンパンチ足りないような印象を受けて、次走の京成盃グランドマイラーズでは思い切った競馬をしました。ハナに行ったら噛みすぎてしまって、ずっと噛みっぱなし。ハナに行ってはいけない馬なんだ、とわかりました。そのあと久しぶりに乗ったのが、勝った8月のスパーキングサマーカップでしたが、返し馬からガラッと馬が変わっていた。体幹が良くなっていて、ハミの取り方も違っていた。操作性が良くなっていて、驚きました。以前はに掲げていたから、高知の黒船賞や名古屋のかきつばた記念の選択肢もあるなか、船橋マイルの京成盃グランドマイラーズを選んで使った。京成盃グランドマイラーズの勝ち方や上がりタイムを考えれば、かしわ記念に出ても良い競馬をしてくれるんじゃないかと思えた。順調に、かしわ記念まで向かえればベストだったけど、脚元のこともあるので無理をさせたくない。年は重ねているが、大事に使われてきた馬だから、まだまだ余力はあると考えている。脚元さえ良くなってくれれば、またきっと走ってくれるはず。使いたい気持ちはやまやまだが、ここは断腸の思いで、しっかり休ませることにした。心身共にリフレッシュして帰って来てくれるだろうから、いっしょにもう一段上を目指したい」と、内田調教師は語っていた。7歳にしてキャリア23戦8勝と大事に使われてきたこともあって、さらなる可能性を感じさせるフォーヴィスム。ひと夏を休養に充てて、秋以降の復帰が楽しみでならない。ベストの左回りワンターンとなると、盛岡の南部杯挑戦はいかがだろうか。兵庫ゴールドトロフィーや、浦和ゴールドカップというプランも考えられる。脚元のケアをしつつの調整スタイルは続くだろうが、ここからもうひと花を咲かせてくれることを期待したい。(中川明美)13
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