今回も兄のミルコと生活を共にしたそうだが、他のジョッキーとの交流はどうだったのだろう?「ミルコと僕は、とてもストロングな兄弟愛で結ばれていますからね。フリータイムには大阪へ行ったり、有馬温泉へ行ったりして楽しみました。有馬温泉は初めて行ったけど、景色が綺麗で温泉も気持ち良くて、良い思い出になりました。日本のジョッキーは皆、良くしてくれます。中でもユースケ(藤岡佑介)、カンタ(田口貫太)、ミライ(岩田望来)らとよく話しました。また、タケシ(横山武史)は僕のファンらしくて(笑)、僕が中山や東京へ行くと、必ず話しかけて来て、競馬の話をします。僕がマッサージを受けている時もいつも横にいて、熱心に色々な質問をしてくるんです。ナイスガイですよね」ミルコのように、日本での通年免許の取得を考えていないのか?を聞くと、ニコリとしてこう答えた。「日本語が難しいし、今はフランスで毎年上位争いできるポジションをキープしているので、すぐにとはなりませんけど、勿論、今後の選択肢の一つとして考えています。ちなみに、来シーズン(25年)はナーラン・ビザコフオーナーとの契約を結べたので、フランスでの活躍に注目してください」カザフスタン人のビザコフ氏は、昨年のマイルチャンピオンシップ(G1)に挑戦したチャリンのオーナーとしても知られる人で、近年はフランス国内に牧場を持つ等、同国での勢力を広げている。今季もクリスチャンの活躍から目が離せないが、改めて「それでも日本は好きなので、来られるチャンス中で、無観客競馬でした。せっかくヨーロッパ最大のレースを勝てたのに、お客さんから祝福の声がなかったことは残念でした」そんな悔しい思いは、僅か3年後に晴らされる。23年、同じルジェ厩舎のエースインパクトを駆って、2度目の凱旋門賞制覇。競馬場に駆けつけた大勢のファンから、喝采を浴びた。「エースインパクトは、何年かに1度現れるかというトップ中のトップの馬でした。ヨーロッパだと、フランケル以来という感じ、日本で言うなら、ディープインパクトみたいなスペシャルホースです」クリスチャンを背にデビュー戦を快勝。ソットサス同様、シュレンヌ賞からジョッケクルブ賞を連勝すると、ギヨームドルナノ賞(G2)を経由して、凱旋門賞を優勝。現役生活はこの3歳時の1年間だけで、戦績は6戦6勝。そのうち2つのG1を含む5度、タッグを組んだのが、クリスチャンだった。「3歳でダービーと凱旋門賞の両方を勝つこと自体が、なかなかできる芸当ではありません。パドックではイレ込む面があったり、軽いキャンターだと上に飛ぶように走ったりと、決して従順なタイプではなかったけど、レースへ行くとガラリと変わる。なかなかいない、プロフェッショナルな馬でした」想いを述懐する。「1度目と違い、観客を入れての開催でした。やっぱりファンの前で勝てたことには、格別の嬉しさがありました」見され、長らく抗がん剤を打っての闘病生活が続いている。「手術が必要ということで、ずっと休んでいます。一見、常に怒っているように見えるけど、親しくなると本当に優しくて、自分にとっても大事な人なので、心配だし、早く元気になって戻って来てほしいです」秋には、2年ぶりに短期免許を取得して来日。以前と何か変わったことを感じたか?を問うと、こう答えた。「京都競馬場がリニューアルオープンしていました。パドックやスタンドが凄く綺麗で、騎手目線で言うと、ラストコーナーが以前よりもゆったりとして、スムーズに回れるようになっていました。これは良かったです」そして、2度目の凱旋門賞制覇でのちなみにルジェは昨年4月に癌が発話題を日本に戻そう。2024年のがあればまた来たい」と言い、更に次のように言葉を続けた。「日本の調教師は、騎手の意見を凄く尊重してくれます。フランスだと、ほとんどの調教師がレース前に『逃げちゃダメ。2〜3番手でロスのないコースを走れ』等といった、指示をしてきます。たとえ大外枠でもそう言ってきて、できないと乗り替わりなんていうのもしょっちゅうです(苦笑)。でも、日本の調教師は『馬混みが苦手』とか『歩様がかたい』といった特徴を教えてくれこそすれ、乗り方については任せてくれる人がほとんどです。なので、騎手としては、日本の方が遣り甲斐を感じることができます」そして何よりも、日本競馬を好きな大きな理由があると言う。先述した桜February 2025 vol.27714キングサーガ 11/9(土)京都 3歳上2勝クラス 1着バロネッサ 11/16(土)京都 3歳上2勝クラス 1着23年1月、3歳でデビューした彼は ─Jockey's File─Interview with Cristian Demuro
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