ECLIPSE_202411_12-15
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た。その厩舎を管理している長野之祐厩舎長は、フサイチホウオーが幼少時にイヤリング厩舎にいた頃にも管理を行っていた。 「リードホースになったと聞いた時に、是非とも自分の厩舎に来て欲しいと思いました。こうしてまた一緒の時間を過ごせることをとても嬉しく思っていますし、これからも元気に子供たちの世話をしてもらいたいです」と、長野厩舎長は笑顔を浮かべた。リードホースの活躍の場は、イヤリング厩舎に限ったことではない。藤島育成主任はある日、ノーザンファーム早来の日下和博調教主任(当時)から、「大人しいリードホースを貸してもらえないか?」との相談を受けることとなる。数年前からノーザンファームの育成厩舎で行われてきた休養馬の放牧管理だが、その先駆けとなったのはノーザンファーム早来の牝馬厩舎だった。放牧の効果もあったのか、牧場で鋭気を養った馬のその後の勝率は目覚ましく、その都度、日下調教主任は藤島育成主任にリードホースの貸し出しを依頼していくようになる。 「リスグラシューも現役時、ノーザンファーム早来でリードホースと共に夜間放牧を行っていた馬となります。この時はアフタービートというリードホースが、その役目を果たしてくれました」(藤島育成主任)アフタービートは現役時代21戦2勝。繁殖入り後はキャロットクラブ所属馬として、中央で2勝をあげたマージービートなど、コンスタントに勝ち馬を送り出していく。繁殖引退後にはサードキャリアとしてリードホースとなったのだが、その温厚な性格も相成って、今ではリードホースの中で最も頼れる存在となっている。 「アフタービートならば、リスグラシューと一緒でも大人しく振舞ってくれるだろうと思っていました。リスグラシューは2017年、2018年と続けて夏をノーザンファーム早来で、アフタービートと共に過ごしています。そして2018年、4歳の秋には牧場から戻ったすぐ後に、エリザベス女王杯を勝ってくれました。近くで見ていただけに、G1で活躍してくれた姿を見た時には、嬉しかったです」(藤島育成主任)が、今も元気にリードホースとしての仕事を行っている。また、その豊富なキャリアをいかすかのように、新しく仲間入りしたリードホースにその作法を教える役目も担っており、今後もノーザンファームにとって欠かせない存在と言えそうだ。では乗馬を経験した馬にとっての「サードキャリア」の一つともなっているリードホースであるが、その中にはウインドインハーヘアのような多くの「名牝」たちの姿がある。 「アメリカ競馬で殿堂入りを果たしアフタービートは現在30歳となった繁殖牝馬を引退した馬に加えて、今たアゼリや、エクリプス賞最優秀古牝馬に選出されたジンジャーパンチ。その他にもジェンティルドンナの母であるドナブリーニや、キャロットクラブと縁の深い馬ではシンハリーズや、ヴィートマルシェもリードホースとして仕事をしています」(藤島育成主任)現在、リードホースで最年長となったのが、31歳のシアトルスペシャルであるが、過去には33歳まで元気にリードホースの仕事をしてくれた馬もいたという。 「さすがにシアトルスペシャルは体型的にも年齢を重ねたなと思いますが、他の30歳を超えているリードホースと同じく、健康そのものです。会員の皆さんに馴染みのある血統馬も繁殖牝馬となるだけでなく、その中にはリードホースの仕事をしていく馬も出てくるとは思いますが、自分たちとしては元気に、長くそのキャリアを全うさせていけるように、日々管理をしていきます」(藤島育成主任)イヤリング期における子供たちも、「名牝」や「名馬」と呼ばれたリードホースたちと共に放牧地を駆けまわることで、その走りなどから得ることも多いはず。それどころかG1レースを沸かせた現役時の話や、スターホースとなった産駒の幼少期の話までも、教えてもらっているのではという気もしてきた。 (村本浩平)クラブを代表する名牝の側にもリードホースの姿があった馬の「サードキャリア」だけでなく、子供たちにとっても「良き先生」となるNovember 2024 vol.27414No.馬名25ダイヤモンド26デルフィニウム17牝07/04/0822牝02/03/2227トゥーピー28ドナブリーニ21牝03/03/2729トライアンフマーチ18セン06/04/1130ドルチェリモーネ23牝01/04/0531ニシノササメユキ27牝97/04/1932ハルーワスウィート23牝01/03/1233ビスクドール26牝98/03/1934ピンクパピヨン26牝98/02/1635フサイチホウオー20セン04/02/1636フラーテイシャ25牝99/02/0537ブリガドーン38ブルーメンブラット21牝03/02/2039フロールデセレッソ20牝04/04/1740ホーリーブラウン26牝98/02/0641マンデラ24牝00/02/1742ミスティック43ライクザウインド24牝00/03/2144リュヌドール23牝01/04/2245レアクラシック20牝04/02/2246レーヴドスカー27牝97/04/2447レーゲンボーゲン22牝02/04/0748ローズバド26牝98/04/2920牝04/05/0820牝04/03/05クゴールド21牝03/04/23トル21牝03/03/0625牝99/02/12ティック         ディーバスミスリップス※元キャロットクラブ所属馬は7頭(網かけ表示)ノーザンファーム リードホース一覧(2024年10月現在)年齢性別生年月日No.馬名年齢性別生年月日1アコースティクス23牝01/03/0620牝04/03/202アゼリ26牝98/05/063アドマイヤテレサ24牝00/03/034アフタービート30牝94/02/165インティライミ22セン02/04/066ヴィートマルシェ22牝02/04/167カメリアローズ24牝00/05/318カリズマティッ9キャッチータイ10ケアレスウィスパー20牝04/02/0411サーモンベリー21牝03/02/1612サイレンスギフト23牝01/05/1013シアトルスペシャル31牝93/01/2614シーズライクリオ28牝96/03/0915シェルズレイ21牝03/05/2316ジャッキーテースト23牝01/01/3117ジュピターズジャズ25牝99/03/1318シルヴァースカヤ23牝01/01/1719ジンジャーパンチ21牝03/04/2320シンハリーズ22牝02/03/0321スカーレットベル23牝01/04/0622スタイルリス23タイトルパート18牝06/02/1224タイムウィルテル24牝00/02/13仔馬たちの見守り役 リードホース─イヤリングにおける重要性とサラブレッドのサードキャリアの創出─

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