ECLIPSE_202409_4-9
3/6

るかが大切であるということを伝えていきました」(楠木主任)乗馬に関する講義であり、そして、ノーザンファームに導入されていた乗馬シュミレーターによる騎乗バランスの修正だった。フを目指す騎乗未経験者のために、「乗馬未経験者研修プログラム」というカリキュラムを取り入れている。そこでは馬との接し方(曳き方や手入れの仕方)など、馬に関わる上で基礎的な動作を学んだ後、楠木主任をはじめ豊富な馬術経験を有するスタッフが、実馬での練習や乗馬シュミレーターを用いた指導に加えて、講義も行っている。 「講義ではまず、馬が障害を飛んでいく原理を教えていきました。その原理を頭に入れてもらえたのならば、安心して障害飛越へと入れるからです。その他にはオリンピックまでの期間内に練習してもらいたいことや、馬に乗った際に気にして欲しいことなどを伝えていきました」(楠木主任)対して、騎乗練習や講義を行っていたのは、僅か4日間だけだった。「佐藤選手はアスリートとして一流であり、だからこそ馬術のメカニズムを頭に入れておけば、応用が利くと思っていました」(楠木主任)に参加している高校生や大学生は、そそれと並行して行っていったのが、ノーザンファームでは、調教スタッ実はこの時、楠木主任が佐藤選手に一方、乗馬未経験者研修プログラムのメカニズムを頭に入れるよりも、実際に身体を使いながら学んでいった方が、飲み込みが早いことがあるという。 「さすがに、4日間の指導で教えられることに限界はありました。ただ、佐藤選手は優れたアスリートであるからこそ、ここで学んだ記憶をスムーズに身体で再現することができます。それを意識しながら、練習を重ねていけたのならば、オリンピックまでの修正点も見つかってくると思いました」(楠木主任)指導の順番こそ前後しているものの、現在、「乗馬未経験者研修プログラム」を学んでいる若手スタッフたちは、オリンピック選手たちと同じ指導を受けていることともなる。 「自分も北海道乗馬連盟では強化部長を任せてもらっていますが、指導者として短期間で生徒たちの成績を上げていく方法論は、このプログラムの指導を通して培われたと思います。そして今回はオリンピックの馬術競技で用いられる、セルフランセ種を練習馬として用意できたことも含めて、ノーザンファームの環境があったからこそ、手厚いバックアップができたのは間違いありません」(楠木主任)ノーザンファームで4日間の馬術研修を行った佐藤選手だが、その僅かな時間で格段に技術が高まったわけではない。ただ、楠木主任は指導者としてノーザンファームで行っている「乗馬未経験者研修プログラム」とは?出国の2日前に行われた最終調整で満点への自信を深める      6September 2024 vol.272ヴィンセンシオ(シーリアの2022)に騎乗する楠木主任楠木 貴成 Takanari Kusunoki 1979年北海道安平町生まれ。生家は現在のノーザンファーム空港内の敷地内にあり、ノーザンホースパークが開園した1989年から、乗馬を習い始めていく。中学卒業後は奈良県立山辺高等学校へと進学し、近郊の乗馬クラブで馬術の腕を磨くと、明治大学へと進学。当時、馬術部の主将だったのが、日本代表チームの大岩義明氏となる。大学卒業後はノーザンホースパークへと入社。2014年、馬術の仁川アジア競技大会では日本代表に選出され、総合馬術団体で銀メダルを獲得する。また、「乗馬未経験者研修プログラム」の以前に取り入れられていた「ファームステイ」時代から、若手スタッフの乗馬指導を行ってきた。現在は騎乗指導主任としての仕事だけでなく、午前中はノーザンファーム空港の騎乗スタッフとして、キャロットクラブ所属馬をはじめ育成競走馬の調教も行っている。パリオリンピック近代五種 銀メダル獲得の舞台裏─ノーザンファーム 楠木貴成氏インタビュー─

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る