世代でもっとも賞金を稼いでいる馬(以下、「世代トップ馬」)に注目してみると、意外と安価な価格帯の馬が目立つことに気づかされます。現3歳世代までの10世代で見ると、青色背景で示した6頭が、世代平均募集価格を下回る馬でした。特に、2017年産から2020年産にかけては、ヴェラアズール、エフフォーリア、ナミュール、タスティエーラと、世代トップ馬が4世代連続で世代全体の平均を大きく下回る募集価格の馬です。値上がり基調が鮮明になった後の世代なだけに、意外な感があります。近年は「種牡馬戦国時代」などの影響もあり、思わぬ価格帯から活躍馬が出てくるケースが、クラブ馬全体として増えています。その中でも、キャロットクラブにおいては、クラブの顔とも言える世代トップ馬が、安価な価格帯から近年連続して出てきたという点が、興味深いところです。誤解の無いように言えば、キャロットクラブ全体として見ると、募集価格が安い馬は、高い馬と比較すると相対的に勝ち上がり率や重賞馬率、平均獲得賞金などの主要指標において劣るという基本傾向には変化がありません。すなわち募集馬全体としては、値付けロジックは正常に機能しているということです。ただ、そうした傾向にもかかわらず、世代を代表する大物に限っては比較的安価な価格帯からもコンスタントに出現しており、これは馬券で例えると「穴狙い」のスタンスでも戦える余地があるということで、このインフレ時代に夢のあるお話に映るのではないでしょうか。最後に、そうした「穴馬」の狙い目をデータで探っておきましょう。ここでは特に、先ほど挙げた最近の4頭に注目します。まず、この4頭はいずれも「母がクラブOG馬」であるという共通点があります。以前本欄でも紹介しましたが、やはりキャロットクラブの母馬優先対象馬は強しという印象で、これは穴馬狙いでも通用するセオリーと言えます。さらには、この4頭中3頭の母が、「現役時に中央で3勝以上」を挙げていま(2012年産〜2021年産/2024年7月末現在/獲得賞金には手当等含む/した。ヴェラアズールの母ヴェラブランカのみ2勝でしたが、同馬は怪我により3歳時に早期引退しています。一般的に、母馬の勝利数と産駒の成績には正の相関関係がありますが、世代トップを目指すには、やはり母3勝レベルの下地は欲しいところです。もちろん、母が4勝以上や重賞クラスであれば、より活躍期待値は高まりますが、そうした場合、募集価格が低く抑えられることはまずありませんので、比較的安価な馬から大物を狙う場合は、「母がクラブOG馬、かつ現役時に中央3勝以上」を基準に探してみるのが有効と言えそうです。また、「母の初仔〜3番仔である」という条件も、ヴェラアズールを除く3頭に当てはまります。繁殖実績が判明する前の青田買いは、新種牡馬狙いと同様に、リスクがある反面、当たった時の果実も大きいということです。しかしこうして見ていくと」ヴェラアズールに関しては、募集時の背景を考えると、大物と狙って引き当てるのは相当に困難であったことがデータからもうかがえます。◆◆◆今回は、最近の競走馬価格高騰の波がクラブにも来ていること、またその中でもキャロットクラブにおける比較的安価な馬の活躍について見ていきました。なお、本年の平均募集価格は先述した通り4310万円です。過去より水準は上がっていますので、あまりに安い水準にこだわりすぎると、選択肢が狭くなってしまう点にはご留意ください。「安価な大物」の狙い目は?21性別募集価格(万円)5000牡2800牡2600牝2800牡1600牡牡140002800牡3000牝4400牝2400牝各世代 獲得賞金トップ馬一覧 父母 (2024年7月末現在/獲得賞金には手当等含む/一口馬主DB調べ)サトノクラウンハービンジャーエピファネイアエイシンフラッシュロードカナロアルーラーシップハーツクライディープインパクトマンハッタンカフェ中央競馬所属馬成績/一口馬主DB調べ)勝ち上がり率重賞馬率平均獲得賞金6130万円5251万円4057万円2381万円キズナフィンレイズラッキーチャームパルティトゥーラサンブルエミューズケイティーズハートヴェラブランカグレイシアブルージンジャーパンチ10.9% 8.0% 3.8% 1.7%65%58%49%43%シーザリオリリサイドシンハリーズ馬名生年2021シックスペンス2020タスティエーラ2019ナミュール2018エフフォーリア2017ヴェラアズール2016サートゥルナーリア2015メールドグラース2014リスグラシュー2013シンハライト2012ルージュバック世代平均募集価格(万円)3930340634413793363332073233269026532552募集価格帯4000万円以上3000万円台2000万円台1000万円台キャロットクラブ 募集価格帯別成績
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