この夏をにぎわせたパリオリンピック。総合馬術競技の団体戦で、日本チームが銅メダルを獲得したニュースをご覧になった方も多いと思う。馬術として92年ぶりのメダルだったこと、そしてチームメンバーがいずれも40歳前後の〝初老ジャパン〟だったことでも話題になった。この〝初老ジャパン〟のネーミングが一人歩きした感はあるが、それも含めてパリオリンピックは奇跡の連続だった。大岩義明、北島隆三、田中利幸、戸本一真は、2018年の世界選手権からずっと4人でチームを組んできた。目標は常に団体メダル。自国開催の東京オリンピックにも、この4人で臨んだ。しかし、東京オリンピックは少し違った。団体戦は従来、4人馬でチームを組んでその上位3人馬の成績をカウントしていたが、チーム当たりの数を減らして出場国/地域を増やすことを目的に、東京オリンピックから3人馬でチームを組んで、その全員の成績をカウントするフォーマットに変更されたのだ。4人のチームという気持ちは変わらないが、実際には正選手は3人であり、1人がリザーブとなる。東京オリンピックでは北島がリザーブだった。実際には3日間の競技の中でメンバー交代をすることになり、北島は最終日のみ出場したが、目指していたメダルには遠く及ばなかった。次の目標をパリに切り替え、この4人は出場枠を獲得すべく活動した。しかし、2022年の世界選手権、2023年の地域予選のいずれも枠獲得には至らず、パリが4人で臨む最後の大会になるはずだった彼らが、その舞台にさえ立てない状況に陥った。ところが数ヵ月後に、地域予選の上位国の馬がドーピング検査で陽性になったことで順位が入れ替わり、日本は思いがけず団体出場枠を手にしたのだ。一度は諦めた団体出場が叶った彼らは、改めて覚悟を決めた。今度こそメダルを獲る、と。2024年6月。選考の結果、大岩、北島、戸本が代表に、そして田中がリザーブとなった。田中はいつ交代することになっても対応できるように、正選手と同じ準備をすることが求められるが、最後まで出場しない可能性が高い。逆に、リザーブとの交代が生じることは、メダルはもちろんのこと、上位の成績を得ることは極めて難しくなることを意味する。そのような状況の中、7月27日に競技はスタートした。総合馬術は、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3種目を3日間かけて戦うトライアスロンのような競技で、その合計減点の少なさを競う。初日の馬場馬術競技で、北島&セカティンカJRA、戸本&September 2024 vol.27210 クロスカントリーのコースはヴェルサイユ宮殿の森の中につくられた(戸本一真&ヴィンシーJRA)速報Report4人が起こした奇跡─総合馬術日本チームがパリオリンピックで銅メダル─Text: 北野 あづさ
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