ECLIPSE_202405_11-13
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吉原寛人騎手の手が大きく上がった。そのまま大歓声の止まないスタンドに向かって、何度もこぶしを突き上げた。第73回川崎記念を優勝したのは、川崎・内田勝義厩舎に所属するライトウォーリア。予想通りの逃げで、うまく折り合いもついた。勝負どころの3コーナーから早めにアイコンテーラーに並びかけられたが、そこからがこの馬の粘り強さ。直線は競り合って、いったんは前に出られたが巻き返して、勝負強さを発揮した。この馬の性格を熟知した吉原騎手の好騎乗で、大金星をつかんだ。 「喜びが爆発しました。スタンドからものすごい歓声が聞こえて、あそこに行かなきゃって。思わず、ウイニングラン。とにかく最高の1日でした。最後は首が出たまま50mくらい走っていたので、どうかこのままと願うような気持ちでした。全場重賞制覇の夢も叶って、川崎記念まで勝てたことは感慨深いものがあります。うれしい勲章になりました」と語る吉原寛人騎手は、今年2月に姫路の兵庫ユースカップを勝って、現存する地方競馬全14場(ばんえいを除く)での重賞制覇達成という偉業を成し遂げたばかり。ステッキ1本で全国の重賞レースを渡り歩く仕事人は、見事ライトウォーリアを川崎記念馬に導いた。地元・川崎の所属馬が優勝したのは平成16年のエスプリシーズ以来、20年ぶりの快挙だった。内田勝義調教師にとっても、川崎記念は騎手時代にカネショウスーパーで制したことがある特別なレース。いつも冷静沈着な内田調教師も、気持ちが高揚しているのがわかった。 「夢のようですね。前走では掛かってしまったので、『今回はそうっと出していって、折り合い重視で乗ってほしい』と吉原騎手には伝えました。本当にうまく乗ってくれましたね。(直線は競り合いで)ゴールに入るまで、もうドキドキ。最終追い切りが抜群に良かったとは言え、Jpn1ホースになるとは、本当に偉い馬です。ここでいったん放牧に出しますが、1800〜2000mが合っていますので、今後のことはオーナーサイドと相談して、決めたいと思います」そして、表彰式では号泣している瀬戸貴博厩務員の姿が印象的だった。ライトウォーリアは2017年2月父はマジェスティックウォリアー。母スペクトロライト(母の父ディープインパクト)。ボールドルーラー系の米国血統の父と、ダートで2勝したパワー型の母の血から、いずれはダートでの活躍が見込まれていたようだ。募集時のカタログには『首は長く太めで、顔立ちは精悍で顎張りがよく、肩が起きて胸もよく発達しているため体高があり、(中略)筋肉の厚みが抜群のパワーを秘めていることを示していま1113日に、ノーザンファームで誕生した。     ライトウォーリア 川崎記念制覇までの軌跡─7歳で始まる第3章へ─Text: 中川 明美

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