ECLIPSE_202403_14-17
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入されたフレンチデピュティ。日本での供用初年度は192頭の繁殖牝馬に配合を行っているが、その中にキョウエイマーチの名があった。そうして生まれたのが、ヴィートマルシェ。デビューが遅れ、3歳秋にダート1000mの未勝利戦を勝っただけの競走成績だが、そこからの枝葉の広がりは会員の方々の方が詳しいだろう。 「キョウエイマーチが1頭しか牝馬を残せなかったのはショックでしたが、ヴィートマルシェが頑張ってくれた。サンブルエミューズ、マルシュロレーヌを残し、孫のナミュールもG1レースに勝ってくれた。彼女たちも、きっとすごい繁殖牝馬になると思う」と吉田代表は少年のように目を輝かせた。それにしても、と思う。約100年前にオーストラリアから輸入された繁殖牝馬から、いくつもの牧場を経てつながれてきた末裔が、世界最高峰レースのひとつ、ブリーダーズCディスタフに優勝するなど、だれが想像しただろうか。先人たちの種牡馬選び、そして、生産、育成システムに間違いがなかったことを示していると言えよう。時には途切れそうになったこともあるが、それでも、そして、この物語はまだ終わりではない。永遠に続く、ネヴァーエンディングストーリーなのだ。*      *   シ 場所は北海道新ひだか町の北海道市場。ノーザンファームの中島文彦ゼネラルマネージャーが携帯電話を耳に当てながら、繁殖馬セールに参加していた。ステージ上にいたのは、2021年のフィリーズレビュー優勝馬シゲルピンクルビー。意地とプライドをかけたその入札合戦は、電光掲示板の数字500万円単位でせり上がり、鑑定人がハンマーを振り下ろしたときには1億4500万円(税抜き)を示していた。それは、未供用牝馬としては歴代最高価格にもなった。時は流れて、2024年1月₂₄日。が1億円を超えても衰えることなく携帯電話の向こう側にいたのは、ノーザンファームの吉田勝已代表。「シゲルピンクルビーは、もともとノーザンファームが導入した血統(*注 ゲルピンクルビーの母ムーンライトベイはノーザンファーム生産馬)。できることなら、その血を牧場に戻したかった」と、思いを語ってくれたが、そんな話を聞きながら2023年のダービー馬タスティエーラを思い出した。タスティエーラもまた、生産馬に対する愛情と執念、信頼から生まれたダービー馬だったからだ。タスティエーラの4代母は、1989年に米国から輸入されたクラフティワイフ。この馬は米国で2〜3歳時に₂₂戦して、ダート短距離のリステッドレース2勝を含む7勝、2着3回、3着1回。本馬のオーナーブリーダーであるデュープロセスステーブルの解散セールにおいて、社台グループの創設者・吉田善哉氏(故人)が9万ドルで購入し、日本の地を踏んでいる。今となっては善哉氏がなぜこの馬を選んだのかは知る由もないが、想像力を膨らませばクラフティワイフの母の父はセクレタリアト。セクレタリアトは善哉氏が好んだボールドルーラーの代表産駒であり、また曾祖母タイニーリクエストの全妹プレシャスレディのひ孫に、同じボールドルーラー系ラジャババ産駒で、アーリントンワシントンフューチュリティ(米G1)優勝馬ウェルデコレイテッド(エアシャカールの母の父)がいたことも、少しは関係したのだろうか。そして、このファミリーからは、のちに快足馬サイレンススズカや英国ダービー馬ベニーザディップが誕生するのだが、そのあたりは先見の明というほかない。そんなクラフティワイフは繁殖牝馬として牧場の期待が高く、4歳春の初種付けから3年連続でノーザンテーストと配合を行い、当時鳴り物入りで導入されたスリルショーをはさんで、再びノーザンテーストのものへと向かっている。結果的には供用初年度の1990年からクラフティワイフ出産年齢₁₃歳までの9年間で、〝至宝〟ノーザンテーストを配合すること7度。1990年といえば、結果的に₁₁年連続でJRAチャンピオンサイアーとなるノーザンテーストが、8年連続を達成した翌年のこと。年明けすぐの京成杯をノーモアスピーディが勝ち、スルーオダイナが前年暮れのステイヤーズSから有馬記念をはさんでダイヤモンドSに勝利するなど、まだまだ全盛期。この当時は現在と異なり、トップスタリオンといえども、年間の種付け頭数は₆₀頭前後に抑えるというのが主流の時代。数多の名繁殖牝馬がキラ星のごとくの旧社台ファーム、ノーザンファームにあって、そんな時代に狭き門をくぐり続けて、ノーザンテーストの配合相手に選ばれ続けたクラフティワイフは、繁殖牝馬として大成功する。 3歳で輸入され、₂₀歳の秋に繁殖登録を抹消されるまでの₁₆年間で₁₄頭の産駒を残し、うち₁₂頭がJRAで勝利。March 2024 vol.26616皐月賞2着馬トライアンフマーチ。キョウエイマーチの直仔はクラブで4頭が走っているG1優勝馬の源流をめぐる旅~未来を拓く、ノーザンファームの血統づくり~

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