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この連載は、本誌2018年10月号からスタートした。第1号として取り上げた馬はハットトリック。その次、同年11月号でスポットを当てたのが、本馬シーザリオだった。なのに、なぜまた取り上げるのかというと、そう、ウマ娘でキャラクター化されることが決定したからである。トップバッターをハットトリックにしたのは、キャロット所属馬による初めての重賞勝ち馬(05年京都金杯)だから。次にシーザリオをピックアップしたのは、キャロット所属馬によるG1初制覇(05年オークス)という金字塔を打ち立てたからだ。つづくアメリカンオークスで日本馬による米国G1初制覇をやってのけ、通算6戦5勝、2着1回というパーフェクトな戦績をおさめた。シーザリオは02年3月31日、ノーザンファームで生まれた。02年生まれのサラブレッドは世界的な「ヴィンテージイヤー」と言える黄金世代で、日本ではディープインパクトが無敗の三冠馬となり、英国ではモティヴェーターが無敗でダービーを制覇。仏国では牡馬シャマルダルと牝馬ディヴァインプロポーションズがそれぞれ二冠を獲得し、米国でもアフリートアレックスが二冠馬となった。「ヴィンテージ」と呼ぶに相応しい力を見せている。ディープの種牡馬としての席巻ぶりは言わずもがなだろうし、モティヴェーターは凱旋門賞を連覇したトレヴの父となったほか、G1・3勝馬タここに記した馬たちは繁殖馬としてもイトルホルダー、皐月賞馬ソールオリエンスの母の父にもなっている。シャマルダルは種牡馬として20頭以上のG1馬を送り出し、ディヴァインプロポーションズの仔と孫は重賞を勝ち、アフリートアレックスも複数のG1馬の父となった。そして本馬シーザリオも、繁殖牝馬として数々の名馬を送り出した。3番仔エピファネイア(父シンボリクリスエス)は13年の菊花賞を5馬身差、14年のジャパンCを4馬身差で圧勝。6番仔リオンディーズ(父キングカメハメハ)は、15年の朝日杯FSを優勝。さらに、9番仔サートゥルナーリア(父ロードカナロア)は、18年のホープフルSと19年の皐月賞を無敗で制した。3頭とも種牡馬になっており、エピファネイアはデアリングタクト、エフフォーリア、サークルオブライフといったG1馬を送り出している。牡馬の仔の活躍が目立つが、4番仔の牝馬ロザリンドが国内外の重賞を4勝したオーソリティの母となるなど、「シーザリオの牝系」の基礎は強度を増している。その血は日本の生産界全体を底上げする力になっている。シーザリオ自身と、ここに記した4頭の仔らを管理した角居勝彦はこう話した。 「シーザリオは、限られた人間にしか心を許さない、独特の世界を持った馬でしたね」ヴィンテージイヤーを代表する一頭で、自分だけの世界観を持つ良家のお嬢様。そんなシーザリオは、21年2月27日の土曜日、19歳で世を去った。くしくも、家業を継ぐため調教師を引退することになった角居の、現役最後の週末であった。引退後、石川県珠洲市で元競走馬の余生をケアしている角居は、24年の元旦に発生した能登半島地震で被災した。安否が心配されたが、自身の無事をフェイスブックなどで報告している。今はこちらから連絡するのは遠慮しているが、落ちついたら、シーザリオの牝系の可能性について、また、ウマ娘のキャラクターとなることについてどう思うかなど、ぜひ話を聞いてみたい。本文中敬称略(島田明宏)February 2024 vol.26546    ─       62

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