ECLIPSE_202401_18-21
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へは、地下馬道から出て1コーナー側が左だ。大観衆の待つスタンド前に行くよりも、すぐ左に出て待機所に直行する方が、ナミュールには良い。迷いはなかった。康太騎手がナミュールの感触を味わうのは、この時が初めてだ。この返し馬でしか、イメージと現実のすり合わせはできない。 「切れる牝馬なので、もっとチャカつくのかと思っていました。でも予想外に落ち着いていて、乗りやすかったんです。同時に、背中から弾むような感触が伝わってきて、テン乗りの僕でも好調なのがわかりました」       リーズで18頭の17番から4着。桜花賞発表された時、「また大外枠か!」と思ったファンも多いだろう。これまで、ナミュールは阪神ジュベナイルフィでは18頭の18番で10着と外枠で結果が出せなかった。奇しくもまた右回りでのG1で、16頭中の16番枠。康太騎手は大外枠から、いかにレースを組み立てようとしたのか。 「好スタートなら、どこかで内に潜り込むつもりでした。しかし実際には少しタイミングが合わず、後方からになりました」 〝後方からになればジョッキーに一任する〟。高野師はそう告げていた。ここからは康太騎手の感性に委ねられていた。 「大外枠から若干立ち遅れましたが、気持ちを切り替えて、少しでも距離のロスをしないようナミュールを内に誘導しました。この時点で、人気のシュネルマイスターが見えなかったので、『そのうち外から来る』と思いながら。前の有力馬達の位置関係もしっかり見えていました」3と、平均ペースだった。もっと流れた方がナミュールには好都合だが、現実はそう甘くない。右回りでのコーナリングに課題のあったナミュールが、京都の下りにさしかかる。 「右回りのコーナーは難なくクリアでき、シュネルマイスターや内のジャスティンカフェも見えていました。でマイルチャンピオンシップの枠順がレースのラップは前半3ハロン34秒も、ここで動いたらゴール前で切れ味が鈍る──。そう思い、ギリギリまで我慢しました」馬群をさばいて勝つには、不利のないスペースを見つけなければならない。さらには全力疾走している最中、馬群の狭いスペースに突っ込むことは、馬にとっても勇気のいる選択だ。過去に馬群で挟まれた経験のあるナミュールにとっては、走る気持ちが削がれかねない状況だった。 「前にセリフォス、エルトンバローズが見えました。どこから抜けようか一瞬考えましたが、エルトンバローズと外のレッドモンレーヴの間を狙ったんです」また挟まれる!そう思う間もなく、ナミュールは狭いスペースをこじ開けて前に出た。 「レッドモンレーヴには迷惑をかけてしまいましたが、抜けてからの脚は想像を超えていました。ゴール板では、内のソウルラッシュを交わしたように見えました」康太騎手が、ナミュールの武器である〝切れる末脚〟を引き出した瞬間だった。際どい決着で、2着のソウルラッシュとの着差は、タイム差なしのクビ差。テン乗りとは思えない見事な騎乗だった。大味な、直線一気の競馬に見えた人もいるだろう。しかし、この勝利はナミュールの性格を理解し、緻密なひと手間を重ねたからこそ。誰にでもできる騎乗ではなかった。康太騎手が最高の結果にホッとして芝コースを引き上げて行くと、ナ外枠の攻略法19

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