以前はクラシックディスタンスで強い馬は3000m超の距離でも強いのが当たり前だったが、日本の競馬はどんどんスピード化が進み、2000mと3000mではまるで別競技のように出走馬の顔ぶれが違ってきた現代競馬。そんな中、今年は23年ぶりに皐月賞馬とダービー馬が顔をそろえた菊花賞ということでいつも以上に盛り上がった印象があり、馬券の売り上げも昨年比で上昇した。春の実績馬と夏の上がり馬、どの馬にとっても未知の距離に臨む一戦は人々の興味関心を集めたのだろう。そんな中で、いわゆる「上がり馬」の枠で最も注目されていた馬が、ドゥレッツァだった。ここまで未勝利戦から4連勝。特にクラスが上がってからの内容にすごみが増してきており、まだ重賞実績もない中で4番人気の支持を集めたのも納得だろう。レースについては後ほど詳細に触れるが、恐らく見ていた人間にとってスリリングだったに違いない。春の実績馬を抑えての菊花賞制覇。重賞未経験での勝利は、だった。ここからはドゥレッツァの軌跡をたどっていきたい。まずは尾関師にドゥレッツァの1歳時の印象から聞いてみると「血統的にも楽しみで馬体バランスもいい馬でした。ドゥラメンテ産駒なので少し線が細いところはあったけどバランスもいいし、黒い色で格好いい。もう一度言うけど、いい馬(笑)。育成が進んでも順調で、牧場でもこれはすごい動きますよと話してくれていました」。当時から師の印象は非常に良かったようで、POGの取材でも評価が高かったことを思い出す。これは余談になるが、尾関師は大の中日ファンで野球好き。その世代のラインナップを打順に準えて話してくれたのだが、ドゥレッツァは3番打者と紹介していただいていた。 「牧場での動きの良さも聞いていました。ゲートはある程度スムーズにいって、このまま動くようなら競馬までとも思っていたのですが、思ったほどシュッと動けなかったんですよね。それで一度放牧に出したNF天栄でも、同じような感じだったようです。そこで厩舎に戻ってきたのですが、そこからはだいぶ動きが良くなっていました」新馬戦に向けて入厩した時は調教での動きがかなり良く、記者の中でも評判が良かったことを覚えている。専門紙には、筆者のような取材をする想定班と調教を実際に見ている調教班がいるのだが、特に調教班の注目を集めており、実際に新馬戦では単勝オッズ1・7倍という支持を集めての出走だった。 「動きが良くなった中でのレースを楽しみにして送り出しましたが、競馬にいくと慎重な走り。まだ気を使って走っている感じでしたね。前有利な展開だったのはもちろんだけど、内にもたれる場面もありました」ルメールも「まだレースに集中しておらず、子供」と話しており、新馬戦1390年のメジロマックイーン以来の快挙 Text: 木村 拓人─ドゥレッツァ 菊花賞 優勝─類いまれなる学習能力でつかんだ、最後の一冠
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