ECLIPSE_202311_11-15
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るし、勝てるチャンスがあると思います」と続けました。管理する尾関知人調教師は、見事に戦い抜いた愛馬の姿に感極まった表情で、「直線は本当に、どこまで前を捕らえてくれるのだろう…と。たくさんの人の縁で、ここに立つことができました。みんなで頑張って、こういう結果になって。勝ちたいと思って来たので悔しいのはありますが、スルーセブンシーズを褒めてあげたいですし、関わってくれた皆さんに感謝したいなと思います」と語りました。5歳にして本格化を果たし、世界にも通用する能力を示したスルーセブンシーズ。実績にとらわれずにフランスへ渡った果敢な挑戦は、いつか日本馬の快挙達成への糧となるに違いありません。一方、レースを制したのは、地元フランスのダービー馬であるエースインパクトでした。フランスで歴代最多となる通算7000勝以上を挙げているジャン=クロード・ルジェ調教師の管理馬で、年明け1月26日のデビュー戦からこの日まで、通算成績は6戦6勝。無敗での優勝はオルフェーヴルを破った13年トレヴ以来、3歳牡馬での無敗の制覇となると1998年のサガミックス以来、実に25年振りでした。仏ダービーを芝2100mの世界レコードとなる2分2秒63で制し、ポテンシャルの高さを示していた本馬ですが、この日に見せた末脚は上がり3ハロン33秒06の爆発力で、まさに驚異的なものでした。目を挙げたクリスチャン・デムーロ騎手は、「大きな跳びで走る馬なので、道中は伸び伸びとリラックスして走らせることを心掛けました。フォルスストレートで良い感じで上昇できて、直線では合図をすると、これまでのレースと同じように飛びました」と、武豊騎手がディープインパクトに騎乗した時と、同じようなコメントを残していました。ルートリーミー、母父アナバーブルーと血統は父クラックスマン、母アブソいう愛国産馬。21年のアルカナ8月イヤリングセールで、ルジェ調教師が75,000€(当時のレートで約975万円)で落札。その後、セルジュ・ステンプニアク厩舎の所有馬となりましたが、仏ダービーの優勝後に、ボーモン牧場を運営するシェブーブ家のグッスリーレーシングが権利の半分を購入して、共同所有馬となっていました。ボーモン牧場は、かつてヘッド家の生産拠点となっていたケネイ牧場があった場所の一部にあるドーヴィル近郊にある牧場で、種牡馬はアンテロ、シリウェイ、スタニングスピリットの3頭を供用しています。エースインパクトも、将来はここで種牡馬となることが決まっており、フランスの生産者に待望されています(9月12日に電撃引退、スタッドインが報じられました)。     父クラックスマンは3歳時にニエル賞を勝っていますが、現役当時は同厩舎の同期に女傑エネイブルがいたことで、使い分けもあって凱旋門賞に出走することは一度もありませんでした。ただ、2018年にパリロンシャン競馬場が新装した際、こけら落としとなった最初のG1ガネー賞を勝ったのが同馬で、パリロンシャンへの適性を示していました。その遺伝子が産駒に受け継がれる形で、凱旋門賞は今年も新たな名馬誕生の舞台となり、その幕を下ろしました。OATARPRIX DE L'ARCDE TRIOMPHE15©Scoop dygaColumnist profile 沢田 康文 Yasufumi Sawada在仏競馬ライター。1984年生まれ。2009年に渡仏後、フランスを中心とした海外競馬の記事を寄稿中。サンケイスポーツ「欧州競馬リポート」(木曜日)、週刊Gallop「EUフロントライン」、優駿「ワールドレーシングコラム」を連載中。©Scoop dyga地元フランスの3歳馬エースインパクトが6戦6勝、無敗で凱旋門賞を制す中央で凱旋門賞優勝オブジェを掲げる ジャン=クロード・ルジェ調教師と関係者たち20年ソットサス以来の凱旋門賞2勝

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