ECLIPSE_202308_6-9
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に、牧場側も慎重な対応に努めた。3カ月ほどをリハビリにあて、再びペースアップ。10月8日、美浦トレセンへ移動する。 「到着後は慣れない環境に戸惑い、夢中になって行きたがりましたので、まずは人との関係性をじっくり教えました。調教におけるアプローチの比重として、90パーセントくらいはメンタルが占めると考えています。特に若駒は重視しないといけません。タスティエーラの場合、精神面とともに飼い食いが細いのも晩成の特徴。心身のバランスが整うよう、基本を繰り返しました。ウィークポイントの左トモをケアましたからね。それに彼と私のルーティンとして、この馬に限らず、調教の合間にレース映像を検証したり、細かな部分まで意見交換しています。直前にあれこれ打ち合わせる必要などありません。初の実戦ながら、自信を持って臨めたはずです」ジョッキーだけでなく、トレーナーも思い描いていた通り、絶好の位置取り。両者とも、スローペースに終始した3コーナー付近では、勝利の予感が頭をよぎったと口を揃える。上位4頭が同タイムで入線する接戦だったとはいえ、早めに手が動く有力馬を馬なりで待ち、いざ追い出された瞬間、すでに栄光は約束されていた。していると、直線の攻防では額のトレードマークが草原を舞う蝶のように映った。レース後の記念写真を眺めれば、咲き誇るミモザの花を連想したりもする。堀調教師より、ミモザの花言葉にもある「感謝」の気持ちを伝え聞    7いたせいかもしれない。 「クラシックへ挑むのにあたっては日程に合わせる必要があり、成長を望む時間的な余裕はありません。それなのにタスティエーラは、自然と課題をクリアしてくれました。会員のみなさんのご理解や、牧場サイドの手厚いサポートも大きな力になりましたよ。すべてうまく噛み合ったのがうれしいです」JRA重賞は通算68勝、海外を含めてG1のタイトルも21勝に到達した同ステーブルだが、キャロットクラブ所属馬ではリアルインパクト(安田記念、ジョージライダーS)、ネオリアリズム(クイーンエリザベス2世C)に続くG1制覇となった。ノーザンファーム関連馬としては、タスティエーラが9頭目のG1勝ち馬である。 「開業当初は馬集めに苦労しましたね。生産地に知り合いもいなかった。それで思い切って吉田勝已社長に電話したところ、地方から再転入というかたちで、ジャッキーテースト、マリアダービーのパトロールビデオを見返多彩なスターホースを手がけ、ヴァレリアを預けていただき、両馬の活躍によって縁が深まりました。それから長きに渡って、たくさんの馬と関係者に後押しされ、タスティエーラとも巡り会うことができたんです。たいへんありがたく思っていますよ」ノーザンファーム早来での育成当時から健康的であり、性格も素直なタスティエーラ。調整は順調に進み、当初は昨年4月に美浦に入厩する予定だったが、直前になって左後肢を跛行するアクシデントに見舞われる。靭帯や関節に損傷はなく、通常ならば乗り込みを継続するケースがほとんどながら、豊かな可能性を見込まれていただけ

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