ECLIPSE_202305_12-18
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ダー以下に3馬身の差を付けた。史上19頭目となる無敗の皐月賞馬。そして、史上7頭目の「無敗の2冠馬」になることを誰もが疑わなかった日本ダービーは好スタートから1度は絶好位をキープしながらも、不運にもポジションを下げざるを得ない展開となり、それでも早め先頭から従来のレコードタイムを更新する走りを見せた。レースは、エフフォーリアの強さばかりが目立つものだったが、ゴール前でハナ差交わされた相手は、奇しくも2013年の日本ダービーでエピファネイアの手綱を取っていた、福永祐一騎手(現調教師)だった。500㌔を超える雄大な馬格から繰り出すスピード、瞬発力、そしてジョッキーの意のまま動けるレースセンス。この時、早くも「凱旋門賞に最も近い馬」「史上最強レベル」という声も上がっていたが、前田さんが最も印象に残っているのは「2021年の天皇賞・秋」だという。三冠馬コントレイル、そして3階級制覇を狙うグランアレグリアを文字通りに一蹴したレースだ。当時、クラブを通して厩舎から聞こえてくるのは「しっかりしてくれば」「これからの馬だ」と、成長の余地を残すコメントばかり。その中で、当たり前のように天皇賞・秋に勝ち、有馬記念は堂々1番人気で、先頭ゴールイン。米国のブリーダーズCフィリー&メアターフなど海外G1競走3勝のラヴズオンリーユー、同じく米国ブリーダーズCディスタフの覇者マルシュロレーヌに圧倒的大差をつけて、その年のJRA賞・年度代表馬に選出されている。 〝どこまで強くなるのだろうか〟 「その当時、いや、それ以前から、いつかは、ここ(社台SS)に来るだろうなとは思っていましたが、それがこのタイミングで、まさか自分とは」。言い知れぬプレッシャーを感じながら、頭に思い浮かべたのは「いったい、どんな状態で来るのだろうか」ということだったそう。だが、そんなことをあれこれと深く考える間もなく、エフフォーリアの新生活をサポートしなければならなかった。胸に刻んだのは「まずは理解すること、させること」。 「基本的に馬はフレンドリーな動物ですが、種牡馬は、いわば群れのボスです。仲間を守ろうという本能は時に攻撃的にもなりますし、力もあります。でも、怖がっても仕方ないですし、戦っても意味がない。それよりも、相手のことを好きになること。そうすれば、心が通じ合うと思っています」と、前田さん。スタリオンの先輩スタッフから言われ、大切にしているのは、馬との距離感だという。 「エフフォーリアという馬は、本当に賢い馬だと思います。集牧の時などは呼んだら来てくれますし、普段の手入れのときなどは落ち着いていて、煩わされたことはありません。ただ、心身ともにパーソナルスペースを持っている馬なので、無駄なストレスを与えないためにも、そこには立ち入らないように注意しています。そのあたりは、父親のエピファネイアそっくりです。顔つきや目元もそっくりですけど、中身もそっくりです」と、白い歯を見せた。社台スタリオンステーションへの到着は2月18日。年度代表馬の引退、種牡馬入りは新聞報道よりも早く馬産地に広まり、馬の到着を待たずして「BookFull=満口」マークが打たれた。 「たくさんの方に期待されているというのは、嬉しいです。ただ、今年に関して言えば、種牡馬としての準備期間がほとんどなかったので、小さな体調の変化も見逃さないように十分気を付けています。幸いといいますか、種付けに時間がかかるタイプではないので負担は少ないと思いますが、これまでは使ったこともないような動き、筋肉を使うことを要求されていますので、少なからずダメージはあるはずですから」そんなエフフォーリアは、父エピファネイア、母ケイティーズハート。いずれも「緑、白二本輪、白袖赤一本輪」の勝負服でターフを沸かせた両親から生まれた、生粋の「OurBloodHorse」だ。この会報誌で、その血統背景及び競17社台スタリオンステーション到着時のエフフォーリアと前田さん       

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