(北海道 帯広畜産大学馬術部)大学馬術の頂点、《全日本学生馬術大会》。アルフレードはこの大会の総合馬術競技に3回出場し、3回目の昨年、初めて団体3位に入ってメダルを獲得しました。アルフレードが帯広畜産大学(通称畜大)馬術部に来たのは、必然でした。2011年、2歳のアルフレードはノーザンファーム天栄で調教されたのですが、場長を務めていた広瀬春行さんが畜大馬術部のコーチだったのです。広瀬さんは、「元気な暴れる馬でした。体もパワーもあったから2歳から活躍するだろうと思っていたら、G1の朝日杯を勝ってくれた。天栄調教馬初のG1勝利に震災の年で沈みがちだった場内が盛り上がって、スタッフの気持ちを一つにしてくれた、とても印象深い出来事でした」と、当時を振り返ります。その後、重賞で善戦するも勝ち切れない時期が続き、2016年に7歳で競馬を引退。暴れん坊ではあったものの、リズム良く走り、バランスが起きていたアルフレードに馬術の適性を感じていた広瀬さんは、自ら数ヵ月調教してから畜大馬術部へ送り出しました。広瀬さんは全日本学生の障害馬術競技に出したかったのですが、実際は2019年に総合馬術競技に出場。畜大は出場権の関係で、障害馬術だと個 人戦のみの出場でしたが、総合馬術であれば団体が組める状況でした。学生部員は団体戦出場を希望し、総合馬術を選んだのです。総合馬術は、馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の3種目を同じ人馬のコンビで完走しなければならないのですが、途中で失権して完走できない人馬も少なくない、ハードな種目です。2019年は瀬之口小夏選手、翌年は岡本優選手が乗って完走し、いずれも団体4位でした。馬術競技は選手と馬のコミュニケーションが重要なので、長くコンビを組むのが一般的ですが、大学馬術部では4年生の卒部に合わせて担当馬が変わることが多く、コンビのサイクルが比較的短くなります。2020年の秋、当時2年生だった宮竹秀一朗さんが8代目のアルフレードの担当になりました。もともと競馬ファンで、将来は調教師になるために馬について勉強したいという理由で、熊本から畜大に入った宮竹さんは、入部前からG1を優勝したアルフレードを知っていて、担当になった時には嬉しかったと言います。実際に乗ってみたアルフレードは、障害に向けるとロックオンして必ず飛んでくれるという才能がある一方、ハミ受けが難しく、ハミをはずそうとして頭を上げる癖があり、それを克服するのに1年ほど費やしました。また、G1馬だから動きは軽く速いだろうと思っていたら、そんなことはなくとても重くて、初めのうちはまったく動かすことができなかったそうです。3年生の時は全日本学生大会出場を逃しましたが、2022年、アルフレードとともに最初で最後の出場を叶えました。そして、4年連続4位だった畜大は、ついに団体3位入賞を果たしました。この大会で、宮竹さんは忘れられない経験をしました。クロスカントリーのコース後半に長い上り坂があるのですが、そこでアルフレードが自分からハミをとって、ギアを一段上げたのです。宮竹さんは、初めての感覚に「ずっと、この坂が続けばいいのに」と思いながら、アルフレードとの走りを楽しみました。最後の大会を終えて宮竹さんは引退し、アルフレードは後輩が担当しています。広瀬さんと宮竹さん、それぞれにこれからのアルフレードに望むことを尋ねると、全く同じ答えが返ってきました。それは、「全日本学生総合馬術競技で、個人トップ10に入ってほしい。また、全日本学生障害馬術競技に出場して活躍してほしい」というものでした。14歳になって、競技馬として円熟期を迎えるアルフレード。携わってきた皆の期待を背に、今年も走ります。アルフレード(柏狼) 21畜大の馬の名前には「柏」がつけられる。アルフレードは「柏狼」
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