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      エネアド (千葉県 障害馬術競技馬として活躍しているエネアドの現在のオーナーは、競走馬時代に管理していた戸田博文調教師。戸田師は兄弟馬を何頭も手掛けており、思い入れのある血統だそうです。特に印象に残っているのが、3つ上のブレイクランアウト。朝日杯フューチュリティステークスで3着、共同通信杯では武豊騎手の手綱で、後に秋の天皇賞を勝ったトーセンジョーダンを相手に快勝した兄馬です。その後もG1を何戦かしましたが勝利に恵まれず、4歳の秋にレース中のアクシデントによる怪我で引退を余儀なくされました。その弟であるエネアドは、デビュー戦を上がり3ハロン32秒5という驚異のタイムで勝ちましたが、とにかく気性が激しい馬。手の合わない騎手だと、我の強さを出し反抗するよう2016年11月に引退が決まった時、レースで結果を出してあげられなかったという思いもあり、戸田師が引き取って北総乗馬クラブに預けることになったのです。を担当したのは、当時は障害馬術選手として活躍していた小牧加矢太騎手。クラブ代表の林忠義さんによると、エネアドは繊細でものすごく怖がりで、地面に置いてあるバーをまたぐだけでも大変だったそうです。ただ、この性北総乗馬クラ ブ)格は、障害物を飛越する際に肢を当てないというプラスの注意力に繋がりました。障害物にはいろいろな形状やデザインのものがあり、装飾物や色が派手なものには近づきたがらない馬もいます。怖がりなエネアドのために、最初のうちはバーのみでつくられたシンプルな障害物が置かれている競技を選んで参加していましたが、徐々にいろいろなタイプの障害物にも対応できるようになり、足も速かったことから、林さんは、将来は110cmクラスで勝ち負けできるようになると確信しました。競技デビューは2018年春。その半年後には早くも全日本大会の110cmな動きをすることもありました。乗馬に転向するためのトレーニングクラス決勝で10位に入賞しています。2020年いっぱいで小牧騎手が馬術競技から離れてコンビは解消しましたが、この記事のために「最初はかなり注意深い性格の子だなと思いましたが、今では障害を飛ぶ時にそれが武器になっていると思います。これからも競技馬として活躍してほしいです」とのコメントを寄せてくださいました。実はオーナーの戸田師が北総乗馬クラブでエネアドに乗ったことは数えるほどしかなく、普段はスタッフが乗ってトレーニングをしています。戸田師の一番の願いは、エネアドが幸せに暮らしてくれること。さらに競技馬として成長して大会に出て、その応援に行ければ嬉しいと言います。そんな戸田師は今、9月にノーザンホースパークで開催される全日本大会出場を視野に入れています。出場権利がとれて、スケジュールが合えば何十年ぶりかの競技出場となります。もちろん、エネアドとの競技を楽しみたいという気持ちもあるのですが、戸田師にはもう一つの目的があるのです。小さい頃から乗馬スポーツ少年団で馬に乗り、大学馬術部を経て調教師になった戸田師はずっと、1頭でも多くの馬がセカンドキャリアに進めるようにと考えてきました。引退後に自身がオーナーになった馬もエネアドの他にも何頭かいますし、知り合いの乗馬クラブに声をかけて引き取り手を見つけることもあります。それらの馬たちは新しい場所で大事にされて、活躍しています。馬術競技とは限りません。流鏑馬の馬になったり、イベントで子供たちを乗せたり、障がいのある子供たちのケアホースになったりと、それぞれの個性に合ったセカンドキャリアを送っています。競技馬としてここまで成長したエネアドと競技に出ることで、広がっているセカンドキャリアの運動の中で見本となれば、と考えているそうです。ノーザンホースパークで戸田師&エネアドの雄姿が見られますように。そしてそれが、これからレースを引退する馬たちのセカンドキャリアを後押ししてくれますように!March 2023 vol.25418オーナーの戸田調教師。今年はエネアドとコンビを組んで、全日本大会出場を目指す©c3.photography全日本障害馬術大会2018 PartⅡ(中障害D)では小牧加矢太騎手とともに決勝10位馬術、やってます(前編)─セカンドキャリアで輝く、元キャロットクラブ所属馬たち─

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