新しいチャレンジのミックスセール当歳セッション。良質な若駒をリーズナブルに、というコンセプトを聞き、「ウチも上場をさせてください」とお願いをしたのは、セレクトセールが終わって間もない頃でした。弊社はマーケットに出す馬(売り馬)としては、毎年30頭を生産しています。流産やお産の事故などで数頭の損耗も計算に入れての数字ですが、ここ数年の管理レベルの向上により事故なく、すばらしい出来で産まれてくれるようになりました。今まではセレクトセール1歳セッションを主戦場としており、当歳での売買をしたことはなかったのですが、頭数に対して販路がやや不足していたところにミックスセールの話を耳にし、冒頭のように申し出たのでした。 「血統も馬体もレベル高!」これがノーザンファームの上場予定馬を見ての印象でした。初めてのセールに対するやる気が感じられるラインナップ。「ウチも負けないくらい、良い当歳を出さないと」という意気込みでエントリーしたのが、イタリアンホワイトの2022(父ハービンジャー)とノーブルソニックの2022(父リオンディーズ)でした。ともに血統、好馬体に惚れ込み、導入したお母さんから生まれてきた自信作です。したが、セールのための撮影場所がイヤリング厩舎にしかなく、馬運車でリードホースと一緒に撮影場所まで小旅行(ちなみに、リードホースはオハギさんとメジロドーベルさん)。2頭とも大好きなリードホースに見守られて、スタッフの心配をよそにお利口に撮影をこなしてくれました。それでも、離乳して間もないタイミングでの馬運車移動や、長時間の撮影のストレスが原因と思われる熱発で、数日間体調を崩してしまうアクシデントもありました。旬にはノーザンファームのイヤリング厩舎へ移動しました。暮らす場所、群れのメンバーの変化など、環境が変わることは馬にとってはこの上ないストレスとなるので、子を送り出した親目線の私たちとしては、我が子のことが心配でなりません。ところが、人間と同様に幼子というのはすぐに仲良くなるようで、親の心配をよそに合流したその日のうちに、すっかり群れに馴染んだようです。馬の適応能力の高さには、いつも驚かされるばかりです。まずは8月上旬の写真と動画撮影で 10月の下見解禁日に備えて、9月下下見解禁後は、オーナー・調教師・エージェント、セレクトセールでも馴染みの方々が、たくさんいらっしゃいました。そんな方々に同行して下見をして驚いたのは、当歳たちがみんなしっかりと歩くこと。もともとの撮影や移動など経験値の高さからの落ち着いたメンタルを身に着けていたのに加えて、厩舎の人たちが短期間ながらしっかりとトレーニングしてくれました。威風堂々と持ち前の全身を使った常歩を披露しているのを見ると、親バカ丸出しで、「ほんと良い歩き。すごいわ」などと営業トークにもならず、ただただ感動を吐露してしまうほど、仔馬たちに対する尊敬にも近い感情が湧き上がるのを禁じえませんでした。一方で、課題もありました。セレクトセールをはじめとするセリでの下見はもちろん、クラブの募集馬見学ツアーでも言えることですが、手元の紙媒体や動画よりも、目の前の実馬は良くなっているのが常です。写真や動画の撮影は成長途上に行われ、実馬はより大きく、より筋肉質に、冬毛もすっかり抜けてピカピカというのが、昔からの商売の仕方です。しかし今回のミックスセールでは、すべてが逆。写真や動画ではピカピカだった馬体も秋冷の季節、冬支度を始め、薄いダウンのような温かい毛を全身に纏い始めます。さらに遅生まれの馬たちは離乳から間もないこともあり、ストレスによる状態の落ち込みが顕著になっています。具体的には、トップラインの背中の筋肉が落ちてしまっていたり、お腹がポコンと出てしまったり、首まわりの筋肉が落ちて細く見えるような状態15Feature's TOPIC レイクヴィラファーム 岩崎 義久Side story新しい試み〝ノーザンファームミックスセール〟に参加した生産者の所感
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