円だったことを考えれば、先の吉田副代表の総括も納得だ。繁殖牝馬セールは今回で4回目。世界各国で栄え、今も枝葉を広げている名牝系、あるいはノーザンファームで長く育まれた血統馬を求める声は高く、2019年の第1回目から高い売却率を示している。今回は受胎馬、未供用馬あわせて67頭の上場で61頭を売却。91%の売却率で、9億5600万円。売上げ総額はもちろん、平均価格1567万円、中間価格1100万円のいずれも、過去最高を記録している。過去3回の取引馬の「その後」を調べていくと、購入した未供用馬を競走馬としてデビューさせているケースもあったが、受胎繁殖牝馬を同セールで購入したのち、生まれた産駒を翌年のセレクトセール当歳市場において5倍以上の価格で売却するケースや、翌々年の1歳市場で10倍以上の価格で売却するというケースもあった。もちろん、購入した牧場の飼養管理や営業努力、あるいは神のみぞ知る、生まれた産駒の出来不出来にも大きく左右されるものなので、すべてが上手くいくというものではないが、少なくともノーザンファーム繁殖牝馬セールが、購買者にとって大きな夢を与える市場になっていると言うことは間違いなさそうだ。そういえば、かつて他社主催の繁殖牝馬セールでノーザンファーム生産の繁殖牝馬を購入した生産者から「購入後、どんどんブラックタイプが濃くなっていくので驚いた」という話を聞いたことがあるが、そんな魅力も同セールを支えている。額で取引された繁殖牝馬は未供用馬のアルモハバナ(3歳、父キングカメハメハ)。すでに多くのメディア、媒体で報じられているので詳細は避けるが、現役時代の最高馬体重が466㎏という中型馬で、母ドナウブルーという名血だ。ちょうど、従妹にあたるジェラルディーナが9月のオールカマーを制した直後というタイミングでの上場。リザーブ価格1000万円からスタートしたせりは100万円単位でジ4900万円。オーストラリアで牧場今回のセールにおいて、もっとも高リジリとせり上がり、最終的にはを経営する一方で、日本でも馬主資格を所有する落札されている。なお、受胎牝馬では第2仔となるレイデオロ産駒を受胎しているリアオリヴィア(6歳、父ディープインパクト。現役の重賞2勝馬リアアメリアの全姉という血統)が、やは円で落札されている。今回の市場で大きな注目を集めた同氏は13頭(受胎馬4頭、未供用馬9頭)を2億9700万円で落札。せりを盛り上げた。セール終了後、吉田副代表は「ノーザンファームとしての管理できる頭数には限界があり、泣く泣く手放さざるを得ないような馬が高く評価された。今回のYuesheng Zhang氏Yuesheng Zhang氏によってによって4400万結果には大変満足している」と、時折笑顔を交えながらコメントしてくれた。それにしても、と思う。巷間伝えられているように、近年はどの競走馬市場も盛況裡に沸いており、ミックスセールは、時代が求めた産物ともいえる。しかし、この市場は、まだ生まれたばかり。購買者側の受け取り方も、人それぞれだろうし、もちろん、まだ完成型ではないはずだ。かつてのセレクトセールがそうだったように、このセールは今後、その時代々々の要請や、購買者側の需要に合わせてマイナーチェンジを繰り返しながら成長していくことになるだろう。今後、秋の当歳市場、そして繁殖牝馬セールがどのような市場へと成長していくのか、大変興味深い。近年では牧場を持たない馬主が繁殖牝馬を所有して馬を生産するケースや、逆に生産者が他の牧場の馬を購入し、走らせるケースが散見するようになった。海外では一般的かもしれないがノーザンファームミックスセールは、そんな時代が求めた、最も新しい市場と言える。それ故に今回は購買者側に戸惑いが見られたのも事実。冒頭に書き記した沈黙の8秒間がそれを雄弁に物語る。しかし、だからこそ、大きな可能性を感じさせる。この市場はこれからその時代々々の要請や、購買者側の需要に合わせるようにマイナーチェンジを繰り返しながら大きく成長していくことだろう。楽しみという他ない。繁殖牝馬December 2022 vol.25114受胎馬最高落札価格となったリアオリヴィア(6歳 レイデオロ受胎)未供用最高落札価格となったアルモハバナ(3歳) り 産声上げた新時代セール開催ノーザンファームミックスセール2022
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