セレクトセールを翌週に控えた7月5日(火)、青森県で「八戸市場」が開催され、フェリーに乗って今年も現地に足を運んだ。7月のセリ日程は、八戸を皮切りに、次週がセレクトセール、そして日高へと開催場所が移っていく。この順番はここのところずっと不変である。八戸市場は、一言で表現すると「昭和テイスト満載のレトロ市場」といったところか。円形(正確には八角形)のステージ?に上場馬が入ると、持ち手が左回りに馬を引いて歩かせる。購買者席(観客席)はその周囲をとり囲むようにすり鉢状に作られており、鑑定人が場内の人々に向かって「声かけ」を呼びかける。今年の上場頭数は1頭欠場の46頭。なので、ここでは1頭ずつ、たっぷりと時間がかけられる。新型コロナ禍により、一般の見学者が入場できなくなったとはいうものの、会場には、県内の生産者やその家族などが大勢詰めかけて、期待と不安の入り混じった表情で上場馬に視線を送り、独特の熱気が溢れている。この風景を見ていると、「ああ、日高の市場も昔はこんな感じだったなぁ」と妙な懐かしさを覚えるのだ。そういえば、八戸では、比較展示の後、1頭ずつ速歩を披露する場面もあるし(日高の市場でも以前は行われていた)、セリの前の昼食時には、購買者も生産者も同じお弁当が配布されたりもする。テントで地元名産の〝せんべい汁〟が振る舞われたこともあった。何から何まで郷愁を誘われる佇まいに、ついほっこりとした気分に浸ってしまう。ただ今年の八戸は46頭中25頭しか落札されず、売却率は前年から上げ総額〟も1億円を割り込んだ。平均価格は393万円余。いかにも長閑な雰囲気とは裏腹に、厳しい現実を見せつけられたのも事実だ。その翌週、11日(月)と12日(火)がセレクトセールである。八戸からわずか1週間しか経っていないというのに、あっという間に昭和から令和へと時空を飛び越えてきたような錯覚を覚える。感覚としては、30〜40年ほどの隔たりにも相当する感じである。初日の1歳馬セッション。上場馬は 5早い馬は木曜日に入っているとも聞いすでに前々日から入厩しており(最もた)、この日も朝から多くの上場馬が、購買関係者の依頼で厩舎の前に引き出されて、歩かされたり立たされたりしている光景が見られた。天候は曇りで、割に涼しい。厩舎の間を抜けて、急ぎセリ会場に向かい、受付を済ませる。オレンジ色のビブスを受け取り着用していると、毎回ここでしか会わない取材陣と数多く遭遇する。マスク着用でも、声や目元で誰なのかがおおよそ分かる。高額馬が多数落札され、常に話題を提供してきたこのセールは、当然ながらマスコミの注目度も格段に高い。23・7%も下落してしまった。〝売り速報Reportセレクトセール2022─25回目を迎えたセレクトセール─Text: 田中 哲実
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