ECLIPSE_202207_8-11
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とならないように、オープンな考えでシューのように抜けた能力のある馬の場合は、決めつけることなく臨むようにしています」ムーニーヴァレー競馬場は長方形に近いコースですが、最後の直線が短い辺にあるため173mしかありません。日本には類をみないトリッキーなコースなわけですけど、このあたりでの心配はなかったですか? 「リスグラシューはそれまでにも香港への遠征経験があったし、日本国内でもあちこちの競馬場で走り、どこでもそれなりに結果を残していました。『良い馬なら、どんなコースでもこなせる』というのを証明しながら走っているような馬だったし、実際、調教でこのコースを走った時にも普通に走れていたので、大丈夫だと思いました」線でも差し切れると考えていたわけですよね? 「確かに直線は短いのですが、コーナーにバンク状の角度がついています。だからコーナー手前から、勢いを殺すことなく追い込めるのです。そういう意味で、位置取りが心配になることはありませんでした」本当に嬉しそうにされていたのが印象に残っています。 「はい。オーストラリア出身のジョッキーにとって、コックスプレートは特別な意味を持ったレースです。メルボルンC、ゴールデンスリッパー、コーフィールドCと、このコックスプレー参戦しています。とくにリスグラコックスプレートの舞台となる後方からになりましたが、短い直コックスプレートを勝った後は、トの4レースはグランドスラムと呼ばれていて、僕も子供の頃から見ていました。メルボルンCもそうですが、オーストラリアではハンデ戦のG1も多い中、定量戦なのでベストレースだという人もいます。自分にとっても長年の夢だったので、勝って感動したし、本当に嬉しかったです。その後は有馬記念(G1)に出走しました。相手にはアーモンドアイもいましたが、この時の自信のほどはいかばかりでしたか? 「アーモンドアイが歴史的な名馬であることは、充分に分かっていました。そもそも競馬なので、勝てるかどうかは分からなかったけど、ただ、好勝負できるだろうという自信はありました。グランプリ前の調教で、更に成長しているとも感じたので、その思いは強まりました」有馬記念が、日本の競馬ファンにとって特別なレースであることは分かっておられましたか? 「初来日前のオーストラリアにいる頃から日本の競馬はチェックしており、有馬記念の存在も知っていたので、ビッグレースであることはもちろん分かっていました。ただ、来日して、有馬記念が近づくにつれ、想像以上にスペシャルなレースであると感じました。枠順抽せん会の盛り上がりも凄かったし、連日のマスコミの取り上げ方にも驚きました。また、出走馬を決めるのにファン投票というシステムで行っていることによる特別さや、レース当日の雰囲気も独特でした。実際に参加して、体感してみて、更にスペシャルのレベルが凄いことに気付いたという感じです」レースでのリスグラシューはいかがでしたか? 「最終コーナーの手応えが抜群で、直線に向いてからスペースのあるところへ出した時は、グーンと伸びました。他の出走馬も一流馬が揃っている中、抜け出して行った時は気持ち良かったし『この脚を更にかわせる相手はいないだろう!?』と思いながら、追っていました」勝利した時のお気持ちは、コックスプレートとはまた違う喜びでしたか? 「はい。もちろん、どちらも嬉しいのですが、有馬記念は勝った後のファンの盛り上がりがすさまじかったです。そういう意味での嬉しさも、大きかったです」───────9©Satoshi Hiramatsuリスグラシュー(2019年コックスプレート)ダミアン・レーン Damian Lane 1994年2月6日、西オーストラリア、クーヨンガ生まれの28歳。 父のマイケルは調教師。母ヴィッキーも元調教師。5人きょうだいの長男。15歳で見習い騎手となり、09年に初騎乗。その後、高校を中退して騎手一本に。13年にはセソーヴァーに騎乗してエドワードマニフォルドS(G2)を制覇。自身初の重賞制覇を飾ると、翌14年にはトラストインアガストでインビテーションS(G1)を優勝。G1初制覇も成し遂げた。 その後、ヒューミドールでのオーストラリアンC(G1)勝利などもあったが、日本との距離が一気に縮まったのは17年。元日本馬のブレイブスマッシュで準重賞、同じく元日本馬のトーセンスターダムでトゥーラックH(G1)とマッキノンS(G1)も優勝してみせた。 その後のオーストラリアでの活躍は枚挙に暇がなく、19年に短期免許で来日を果たすと、メールドグラースで新潟大賞典(G3)、ノームコアでヴィクトリアマイル(G1)、リスグラシューで宝塚記念(G1)を次々制覇。その後、豪州遠征したメールドグラースとリスグラシューでコーフィールドC(G1)、コックスプレート(G1)を制したのは皆さんご存知の通り。今春にはドバイのUAEダービー(G2)を日本馬クラウンプライドで制している。

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