ECLIPSE_202205_9-13
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ここで勝利を挙げたものの、牝馬限定の交流重賞ということもあり、ブリーダーズカップ参戦の構想は言い出しづらかったといいます。それでも、春からずっと温めていた計画だったので、ノーザンファームしがらきの松本場長に相談することにしました。 「JBCレディスクラシックは金沢の1500m。適性を考えると使うならJBCクラシックだったけど、帝王賞でも牡馬相手では通用しなかった。いろんな葛藤があり、悩んだ。その中でブリーダーズカップにはすでに同厩舎のラヴズオンリーユーが行くと決まっていたし、一緒に行けたら相乗効果が生まれて良い結果が出るかもしれ     ない、という思いがあった。必死でオーナーサイドを説得し、松本場長も後押ししてくれた。熱意を認めてくれ、挑戦することを許可してくれたオーナーサイドが寛大だった。実行に移させてくれて、本当に感謝している」しかなく、国内輸送の負担を少しでも減らすため、美浦トレーニングセンターで検疫を受けることを決めました。しかし、マルシュロレーヌは美浦滞在の時点で、すでに環境の変化に戸惑っていたといいます。「輸送や検疫は常にちゃかちゃかしていた。でも、アメリカへの出国便は成田空港から落ち着いていたラヴズと一緒に行動できたことが、マルシュにとっては大きかった」。初めての海外遠征でしたが「ラヴズがいなかったら絶対に走れなかった。これは断言できる」。そう言い切るほど、2頭は信頼関係を築いていました。また現地では〝ラコ〟という名のポニーに、調教からレース当日まで側についてもらえるよう手配しました。ここからはラヴズオンリーユーだけではなく、ポニーのラコも一緒にマルシュロレーヌの落ち着きが増していったといいます。岡助手も「マルシュは普段から乗り難しい馬だから、調教にもラコがいてくれて助かった」と語っています。デルマーは常に天気が良くポカポカしていて、夏馬の彼女にとってはこの上ない気候だったのでしょう。レースの5、6日前にデルマーに到着した矢作師は、その姿を見て驚いたといいます。「正直、細くなっているだろうと踏んでいたのに、状態が良くて体もふっくらしていた。最終追い切りも、オイシン(マーフィー騎手)を乗せてかなり速い時計が出ている。太いぐらいに見えたから、このくらい強めにやってもいいと思った。そのくらい、間違いなく状態はよかった」調整を進めるにつれて、期待も膨らんでいきました。「マルシュはアメリカの馬場に合うと思って連れて行ったけど、その適性は追い切りの動きからも感じとれた。しかも追い切りではレースで着用するスパイク蹄鉄を履いていない状態で、それだけの動きをしていたわけだから、本番ではさらに動けるのだろうと思った。それでも相手が相手なだけに、どうだろうという疑問もあった。5連勝中のレトルースカに、ケンタッキーオークス馬のマラサートやシーデアズザデビルなど、かなり強い馬が揃っているというイメージだったし、なんとかそこに食い込みたいという気持ちだった」と、振り返ります。アメリカに同行していた久子夫人は「海外遠征は大変なことばかりだと思11遠征中のオフショット矢作師とマルシュロレーヌ3頭での行動ができたことで、さらに

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