クリソベリルが社台スタリオンステーションに到着したのは、2021年10月の中旬。本馬を最後に見たのは2017年9月初旬の募集馬見学ツアーでしたので、4年ぶりの再会となりました。当時も見栄えのする馬体をしておりましたが、既にベテラン種牡馬の風格すら感じる姿で、馬運車から降り、こちらに近づいてくる姿を見て、私を含めスタッフからは自然と「お〜っ」という声が漏れていました。初めて立ち入った場所であることはもちろん、プライドの高い種牡馬たちが集まる場所にある特有の空気感や、その地に立ち入ることへの緊張感から、到着した瞬間には取り乱す馬も多くいますが、堂々とした姿で落ち着いていました。その姿はまさにダート王。〝王〟という称号が似合う振る舞いでした。その後は、繁殖シーズン開幕まで時間もありましたので、馬のペースに合わせ、十分な余裕をもって種牡馬としての準備を進めていくことができました。まずは、蹄鉄を外し、裸足での生活に慣らしていくことから始まり、蹄の状態を見ながら、徐々に放牧地で過ごす時間を長くしていきます。厩舎の外でも中でも、周りを個性豊かな種牡馬たちが囲むなか、どのような反応を示すのか、隣や向かいの馬とは相性が良いのか、悪いのか…など、スタリオンスタッフが日々、こまめに確認をし、最適な環境を探していきます。あまりに環境に慣れない場合は、放牧地や馬房の位置を変える場合もありますが、クリソベリルに関しては、初めに想定した配置にピタリとハマり、順調に慣れていくことができました。環境にも慣れたら、いよいよ種牡馬としての体作りが始まります。自然体での放牧や、ハンドウォーキング、ロンジングといった運動を中心に、スタリオンスタッフが毎日の状態に合わせ、目標とする理想形を目指し、日々のメニューを組んでいきます。2本の後肢で頻繁に立ち上がることが求められる種牡馬。それまで、立ち上がることは良くないことだと教えられてきたはずの競走馬時代とは真逆に、立ち上がることがメインの仕事になるわけですから、当然、求められる肉体やメンタル作りにも違いがあります。全身のバランス、動きのクセ、馬体の左右差、今すぐにではなくても、年齢を重ねることでウィークポイントになってきそうな箇所、人間とのコンタクトの取り方、性格など、様々な視点から考察して、心と体を種牡馬仕様にしていく作業。父ゴールドアリュールのような名種牡馬になってもらいたいという意識で接していくわけですから、10年、15年先を見据えた取り組みとなります。そして、スタリオンスタッフが時間をかけて丁寧に接した結果、クリソベリルは素晴らしい状態でファーストシーズンを迎えることができました。お披露目の舞台となったスタリオンパレードでは、多くの招待者にその馬体13 キャサリーンパー牝系のニューサイアー クリソベリル─スタッドインからファーストシーズンを迎えるまで─Text: 三輪 圭祐
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