ECLIPSE_2022_13-19
4/7

貧乏ゆすりをしてしまう、爪を噛んでしまう、甘い物ばかり食べてしまう、話ながらスマホを見てしまう。人間なら誰しも悪い癖や習慣を1つは持っているものである。「悪い習慣を持った女性」もしくは「甘やかされた女性」のことをスペイン語で〝Mという。正しい発音と表記は「マルアコストゥンブラーダ」もしくは「マラコストゥンブラーダ」だが、日本競馬では「マラコスタムブラダ」となっている。この単語をどこかで聞いたことはないだろうか。2010年8月10日、アルゼンチン・ブエノスアイレス州北西の町ソリスにあるラ・パシオン牧場で、マプルウェルズという牝馬がリザードアイランドとの間に1頭の牝馬を産んだ。明るい鹿毛に覆われたその仔馬はマラコスタムブラダと名づけられた。後にアルゼンチンG1を勝ち、繁殖牝馬として日本に輸入され、レシステンシアの母となる馬である。ラ・パシオン牧場は2007年に開業した、アルゼンチンの中でも比較的若い牧場である。だが、牧場初年度産駒となる2008年産馬からG1馬ラインパシエンテを輩出するなど飛躍的な成長を遂げ、今ではアルゼンチンを代表する生産牧場となった。2019年は獲得賞金額で生産者ランキングの3位に、2020年は5位に、2021年は3位に入った。800ヘクタールalacostumbrada〟の敷地に建てられた施設は、アメリカの一流牧場のものと比べても引けを取らない。現在はガヴァヌーアモリス、マニピュレーター、リザードアイランドなどの種牡馬がここで供用され、150頭以上もの繁殖牝馬が繋養されている。生産馬の通算勝利数は1600勝を超える。1915年から行われているアルゼンチン伝統のG1競走ダルド・ロチャを2015年に優勝したハットトリック産駒のジャイアントキリングや、2018年のアルゼンチン年度代表馬イルメルカートなど、これまで20頭以上のG1馬を生産した。February 2022 vol.24116レシステンシアの母 マラコスタムブラダの現役時(提供:Juan Bozzello)   レシステンシアの母マラコスタムブラダ─小さな身体に込められた「情熱」─Text: 木下 昂也

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る