マルシュロレーヌが崩し、「ダートでは勝てない」という言い訳を封じたわけである。当日、そして翌日から2週間セリ業務では随分多くの方から祝福の声を掛けられたが、複雑な微笑みを浮かべていた関係者達も少なくない。各BCレースの結果は、種牡馬ランクや各馬の産駒市場成績にも影響する。種牡馬共同所有者、産駒所有者、生産者など、多くの競馬人の思惑の渦が背後にあるため、マルシュロレーヌの優勝は米国競馬人にとっては歓迎すべき結果ではなかったというのが正しいだろう。しかし、米国という国はダイバーシティを持つゆえの難しさがある反面、国籍を問わず結果を出した人をフェアに祝福する寛容さもあり、ディスタフ制覇は本稿執筆時点では、本馬のエクリプス賞ノミネートの可能性を残している。読者の皆さんとは、私がBC終了後に空港のラウンジで見知らぬ人から声をかけられ、レキシントン(ケンタッキー州、来年BC開催地)に戻ってからもガソリンスタンドやスーパーで、市民の皆さんから「おめでとう」と声を掛けられた嬉しい思い出も共有したい。今回の優勝については先行馬が飛ばし過ぎたこと、本馬がその馬群に引きずられなかったこと、鞍上のマーフィー騎手が冷静に前にいたオルティス騎手を参考にできたことなど幸運が作用したと考える人もいるが、このレースは幸運だけでは勝てないし、全てのピースが揃わなければ勝てるレースではなʻto be competitive in the Dirt in the U.S., winning turf races in Japan.ʼwhich means likeい。米国の馬場は基本的に昔とそんなに変わらず、その中で本馬の勝ち時計かし、米国側から見れば「₃₇勝1敗」 とも言え、フランス産のアルカングがBCクラシックを勝った時のような、偶然の勝利と評価する人もいるだろう。競争はこれからも続いていく。日本では、土質のダート馬場への適性を見極めが重要で、矢作厩舎の皆さんの慧眼がこの成功の秘密だと思う。レース後、通訳を通して矢作調教師が米国人は理解しておらず、それゆえ日本馬の今後のBC挑戦が楽しみでもある。これからも競馬の国際交流は続いていく。そして良質の馬が生産・調教される国への関心が高まり、そこに人材が集まり、地域への貢献に繋がるのだと思う。マルシュロレーヌの米国遠征は大きな冒険だったが、今後もチャンスがあれば日本の皆さんには海外遠征に挑戦してほしいと思う。育成・生産牧場の皆さん、おめでとうございます。そして、私達に大きな自信を与えてくれて、ありがとうございました。(ウィンチェスターファーム代表が7番目であることも記しておく。し世界で唯一砂質のダート馬場を持つと説明している。その意味を多くの最後にキャロットクラブ、矢作厩舎、need to have some sort of speed, 吉田直哉)27
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