ECLIPSE_202201
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 「負けてがっかりする奴があるか懸命に走ってくれた馬に済まないではないか。そんな戒めを秘めたこの言葉は、天才種牡馬サンデーサイレンスを日本に導入することに成功した社台グループの総帥・故吉田善哉さんが、「勝てるはずだ」と期待した馬が敗れたとき、生産者、かつオーナーでもある自身に語りかけた至言とされる。BCディスタフに挑戦したマルシュロレーヌ(父オルフェーヴル)は善戦までかと思われていたのに、なんと、勝ってしまった。前もってがっかりする準備をしていた関係者も、多くのファンも、ビックリしすぎてどう喜んでいいのかうろたえてしまった。BCディスタフは、一時「BCレディーズクラシック」と名称を変更した時期があったくらいで、牝馬のメイン格の一戦。出走馬のレベルは高い。凱旋門賞を勝つより難しいのではないかとさえ、考えられていた。輸入されて重賞を4勝もしたルージュバックの母になるなど、重要な繁殖牝馬となった2007年の勝ち馬ジンジャーパンチは、2007年のディスタフの勝ち馬。キャロットクラブと少なからぬ関係はあったのだが…。マルシュロレーヌの痛快な勝利は、ハイペースで先行馬崩れの流れに恵まれた逆転の快走だったのか。そうではない。先行勢がまだ猛ペースで飛ばす勝ったらビックリすればいい」6ハロンを通過するあたりから、マルシュロレーヌは自分で果敢にスパートした。それで抜け出している。メインのクラシックを快勝したニックスゴーはともかく、2着したケンタッキーダービー馬メディーナスピリットや、3着だったトラヴァーズSなどG1・4勝馬エッセンシャルクオリティと、距離こそ1ハロン異なるがその時計の中身はほとんど互角だった。矢作調教師を中心とする陣営の「USAのダートをこなせるはずのスピードに加え、パワーを秘めた馬」の挑戦は、世界が驚く結果をもたらした。伏兵だったマルシュロレーヌには、いったいどんな可能性が隠されていたのだろう。アメリカのメディアも、驚きのマルシュロレーヌの快走を、血統(生産の基盤)を紹介しながら、各国に発信したと伝えられた。マルシュロレーヌのファミリーの日本での出発は、もう一世紀近くも前の輸入牝馬シュリリー(AUS)に到達する。 「5代血統図」以前に登場する牝馬は、シュリリー(₂₅)第一シュリリー(₃₇。レヴユーオーダー)  クインナルビー(₄₉。クモハタ)   スズキナルビー(₆₀。トサミドリ)    トミニシキ(₆₇。ユアハイネス)と連続している。               マルシュロレーヌから数え7代母のクインナルビーは、当時は馬資源が少ないため、桜花賞3着、日本ダービー血統考察頂点のG1制覇!ついに歴史は変わったJanuary 2022 vol.24024マルシュロレーヌ北米競馬の祭典ブリーダーズカップに名を刻む

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