ECLIPSE_202201
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言えるのが、レースで使用するスパイクの蹄鉄選びです。日本チームは既に数多くの海外遠征をしてきましたが、この点に関しては今後より経験を積み重ねていく必要があるかもしれません。今回は、鶴町先生と矢作調教師、厩舎スタッフに加え、私が装蹄を依頼した現地の装蹄師、シャンパン氏が集まって意見交換を行い、蹄鉄を決定していきました。シャンパン装蹄師は、アメリカや海外では知らない人が居ないほど有名な方で、私も違う国の有名装蹄師の紹介を通じて、彼を招聘することができました。シャンパン師は、米オークスに遠征したシーザリオや最近ではジャスティファイ、アメリカンファラオ、アロゲイトなどの装蹄を担当し、過去のアメリカの名馬のほとんどの装蹄をやられた方だと知り、厩舎のみんなは驚いていました。シャンパン師の考えと、みんなの考えの中で選んだ選択が、ご存知の通り最高の結果として形になったことは、本当に喜ばしい限りでした。レース翌日、シャンパン師から「今まで長年仕事をしているが、こんなに純粋に馬の為に、楽しく、真剣に話し合いができて、そして、笑顔が絶えない和やかなムードのチームはない。だか      らこそ、馬はその気持ちをわかって、奇跡の勝利を届けてくれたのだろう」と声をかけていただきました。囲気の中、マルシュロレーヌは堂々と落ち着いた状態で競馬場に到着しました。パドックへ行く前に出走全馬が集まる待機馬房で、現地の筋肉隆々の馬達に囲まれながらも、彼女なりの馬体の張りがしっかりと感じられ、いつも以上に彼女が頼もしく見えました。これまで日本馬がアメリカのダートで幾度となく苦戦を強いられてきたこともあり、それほど強気になることはできませんでしたが、調整していく中で陣営の馬を信じる気持ちは確固たるものになっていましたし、彼女の最高の走りを見せて欲しいとみんなで願っていました。フィー騎手へ「全て任せる。ただ、前半のペースが速くなると思うが急かさず、彼女のリズムを大事にして欲しい」と伝えていました。その言葉があったおかげで、レース前半の速いペースのレース当日、日本競馬と全く違う雰パドックでは、矢作師からマー中でもマルシュロレーヌは自分のリズムで走ることができ、3コーナーから徐々に進出して直線を迎えられたのだと思います。一方で、レース後にマーフィー騎手は「4コーナー手前で外の馬に進路を取られることだけは避けたかったので、気持ち早めに動いた」と話をしていました。調教師と騎手、それぞれの判断が、最高の結果に繋がったのでしょう。私が常日頃から矢作先生にお世話になっている関係で、先生にはマーフィー騎手が初来日した初日に一緒にご飯を食べて頂いたり、その翌週にはご自宅にご招待を頂き矢作夫人の手料理を堪能させて頂いたりと、マーフィー騎手にとっても矢作先生は日本競馬界において特別な存在です。今までも、何度も海外の大レースで騎乗の機会を頂いていたのにも関わらず、結果を出せていなかった中での今回の勝利でしたので、喜びも格別なものがありました。マーフィー騎手には、今後も国内外問わず、キャロットクラブの勝利に貢献できるよう頑張って貰いたいです。最後に、私の人生の中で、これほど興奮し、感動した1日はありませんでした。馬たちの頑張りと、今回の遠征に関わった全ての人への感謝の気持ちでいっぱいです。改めて、競馬は本当に熱いスポーツだと気付かされました。今後も会員の皆様が、このような熱い感動を味わえる馬たちに出会えることを、心から願っております。(安藤裕)23

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