会員の皆様、初めまして。そして、この度はマルシュロレーヌ号のブリーダーズカップディスタフ優勝、おめでとうございます。私はレースホースコーディネーター兼マーフィー騎手の通訳として現地でレースを見守っていました。歴史的勝利の瞬間に立ち会うことができ、私にとっても、マーフィー騎手にとっても感動的な時間でした。素晴らしい経験をさせて頂き、マルシュロレーヌには感謝の気持ちばかりです。今回のブリーダーズカップ遠征に関して、私が矢作厩舎のサポートをさせて頂くことが正式に決まったのは、8月頃でした。まず、最初に苦労したのは、馬の出国日を決めることでした。通常の海外遠征では、出国日を確定させてから全体のスケジュールを調整しますが、世界中に蔓延していたコロナの影響で、飛行機の運行情報も毎日のように変更され、なかなかスケジュールを決めることができず、正式にフライトが確定したのは出国の2週間前でした。出発間際まで正確な予定がわからない状況で、馬の調整にも影響を及ぼす可能性は十分にありましたが、さすがは海外遠征に慣れている矢作厩舎。どれだけ予定が二転三転しても、先生やスタッフの皆さんは柔軟な対応をして下さいました。おかげで、私は最後まで輸送の交渉に集中でき、陣営の希望にできるだけ沿った日程でフライトを手配することができました。ればならなかったのが、現地の交通事情でした。アメリカの西海岸へ遠征する場合、特にロサンゼルス空港周辺は、到着時刻の時間次第では渋滞が酷く、馬が競馬場へ到着するのに長時間かかってしまう恐れがあります。ただでさえ長いフライトの後に、馬運車移動でも時間がかかってしまうと、馬の体調に大きな影響を与えるだけでなく、精神的なストレスも与えてしまうので、その点はとても慎重に手配をさせて頂きました。特に、マルシュロレーヌにとっては初めての飛行機輸送だったので、多くの人のサポートのおかげでスムーズに輸送できたのは良かったまた、輸送の中で特に気を付けなけです。また、ノーザンファームしがらきの獣医師の鶴町先生が日本から馬の飛行機に同乗し、付きっきりで体調管理をして下さったことも、馬の体調に問題がなかった大きな要因だったと思います。デルマー競馬場到着後は、今回の遠征でずっと一緒だったラヴズオンリーユーと共に、全ての調教メニューを順調にこなすことができていました。2頭は特に仲良しで、ラヴズオンリーユーは海外での調整に慣れていたので、お互いの存在が助けになっているのが見ていてよくわかりました。また、既に日本でもSNS等で取り上げられているのでご存知の方もいるかと思いますが、現地の競馬場のラコ君というポニーが、毎朝調教コースの競馬場へ2頭をエスコートしてくれたのも、精神的な安定につながっていたのだと思います。マルシュロレーヌにとっては、自身と比べてサイズも色も異なる馬を見たのが初めてだったこともあり2、3日は慣れない感じでしたが、すぐに打ち解けて、毎朝の調教に3頭仲良く向かっていく姿は本当にかわいくて、微笑ましい光景でした。各国の馬達が、足早に競馬場で調教をこなしている中、3頭が優雅に歩く姿は、世界中のメディアや競馬関係者からも注目を受けました。馬たちがすぐに現地に馴染んだのと同じように、矢作厩舎のスタッフの皆さんも、普段から海外遠征を数多く経験しているだけあって、初のアメリカ遠征に対しても何の問題もなく対応されていたのが印象的でした。実際にマーフィー騎手が追い切りに来た時も、以前からよく知っている矢作調教師やスタッフと、まるで日本にいるかのように談笑し、和やかなムードで追い切りができていました。マーフィー騎手は、追い切り後に「体調が凄く良くて最高に仕上がっている。凄いメンバーの揃うレースだけど、仕上がりの良さなら負けないし、この馬の走りと厩舎の力を信じて、自分のベストを尽くす」と話をしてくれました。私は、これまでもマーフィー騎手と関わってきたので、彼の自信に満ち溢れた言葉を聞き、現地での下馬評に反して奇跡が起きるのではないかと予感していました。アメリカのダートレースに日本の陣営が挑戦するうえで、一番の難所ともチーム・マルシュロレーヌ 〜ブリーダーズカップの舞台裏〜January 2022 vol.24022先導役ポニーのラコ君とマルシュロレーヌ マルシュロレーヌ北米競馬の祭典ブリーダーズカップに名を刻む
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