ECLIPSE_202112_11-15
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新馬戦での馬体重は418キロで、白梅賞でのそれは414キロ。小柄ながら全身を使ったフォームは躍動感にあふれ、前途は洋々と思われた。しかし3戦目のチューリップ賞は直線で進路が狭くなって7着、連闘で臨んだフィリーズレビューは直線で伸び切れず、3着エアメサイアからクビ差の4着。桜花賞の優先出走権を逃した。捲土重来を期したフローラSでは後方から他馬を鋭く差し切って重賞初制覇。本番のオークスはシーザリオ、エアメサイアに続く3着に健闘した。このときの鞍上ケント・デザーモ騎手は「最後は一杯になりながら、自分から手前を替えて、もう一度勝ち馬にファイトしようとしていた。本当にいい馬だよ」とレース後に話した。かがえる通り、ディアデラノビアは負けん気が強かった。ただ、それは時にイレ込みや道中の力みとしても現れ、レース運びの自由度を制限した。オークス後に左前膝の剥離骨折で休養し、4歳となった₀₆年1月に京都金杯で復帰(6着)した後のディアデラノビアは、しばらく勝ち星から遠ざかった。4月のマイラーズCから₁₁月のエリザベス女王杯までは5戦連続の3着。伸びてはくるが、届かない。もどかしかった。とGⅢで2勝を重ねたディアデラノビアだったが、ついにGⅠには手が届かなかった。₀₈年2月の小倉大賞典₁₀着を最後に現役から退き、繁殖牝馬としてノーザンファームへ戻った。同年春にシンボリクリスエスと交配され、翌産。以降は父にドレフォンを持つ₂₀年産の牝馬まで、₁₂年連続で産駒を送り出した。競走年齢に達した産駒は₁₁頭で、重賞勝ち馬2頭とオープン勝ち馬3頭を含む₁₀頭までもがJRAで勝ち馬となっている。勝ち上がり率も産駒の質も高く、繁殖成績は優秀の一言だ。グカメハメハで、府中牝馬Sなど重賞発力は母に勝るとも劣らず、₁₅年のマイラーズC(京都芝1600m)では出遅れて7着ながら、上がり3Fに₃₁た。5番仔ドレッドノータスは父がこのコメントや募集時の紹介文にう 5歳時の₀₇年に京都牝馬S、愛知杯 2番仔ディアデラマドレは父がキンを3勝、エリザベス女王杯で3着。瞬秒9という驚異的なタイムを記録しハービンジャーで、京都大賞典と京都     2歳Sを制覇。₁₆年の皐月賞(₁₅着)ではエアメサイア産駒のエアスピネル(4着)、シーザリオ産駒のリオンディーズ(5着)と相まみえてもいる。ディアデラノビアの仔は程度の差こそあれ、総じて母の影響を感じさせる。活躍の場は中距離かそれ以上で、芝向きの産駒が多い。最大の武器は、ディアデラマドレのパフォーマンスに象徴される瞬発力。4番仔サンマルティンも₁₈年の都大路Sで鮮やかな追い込みを決めた。一方で気持ちを高ぶらせがちな面もあり、今年の北海道シリーズで8番仔カウディーリョが札幌日経オープン2着、丹頂S1着と立て続けに好走したのも、滞在競馬がプラスに働いた部分があったように思う。産駒もGⅠ制覇は果たせていないが、ファミリーには活気があるし、着実に発展もしている。ディアデラノビア産駒は今年、カウディーリョの他にも、₁₀番仔ディオスバリエンテが春にプリンシパルSで2着と将来性を感じさせたし、秋には₁₁番仔グランディアが2歳未勝利戦を勝ち上がり、黄菊賞で3着に入った。ディアデラマドレの初仔クラヴェルも、夏のマーメイドSで鋭く2着に追い込んでオープン入り。その後も中京記念、新潟記念、エリザベス女王杯で連続3着と、重賞制覇を間近に感じさせている。特にクラヴェルは父エピファネイアがシーザリオの産駒だから、血統ドラマ的なブレイクスルーをつい期待したくなる。そういえばエピファネイアが送った昨年の牝馬三冠馬デアリングタクトは、祖母がディアデラノビアと同期の桜花賞2着馬で、同じサンデーサイレンス産駒のデアリングハートだし、母の父がキングカメハメハだし……などと考えるのは想像力が逞し過ぎるが、ともあれディアデラノビア一族のポテンシャルは間違いない。メンタル面についても、この一族の出身馬に携わる関係者はテーマとして強く意識して工夫を重ねている。だからディアデラノビアの子孫が、GⅠのゴール前で持ち前の負けん気を最大限に発揮し、見果てぬ夢を叶える日はいつかきっと来る。そしてそれは、そんなに先の話でもないだろう。 (サラブレッド血統センター 藤井 慎一)152003年募集馬カタログ掲載ページ₀₉年に初仔ディアデラバンデラを出

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