ECLIPSE_202506_12-15
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たノウハウがあり、タスティエーラを後押ししたのはいうまでもない。JRA発売のオッズより香港のほうが支持を集めるケースも多く、卓越した手腕に、現地のファンは絶大な信頼を寄せる。「香港競馬はプロフェッショナルが揃い、世界一フェアな体制が敷かれているのではないでしょうか。医療や装蹄など、遠征馬へのアシストも手厚く、タスティエーラのコンディショニングに大きく貢献しました。とはいえ、やはり日本とは別種の事情があり、学ぶこともいっぱい。各部門の担当者と話し合い、円滑な関係を築くのが重要ですよ。そうした交流を通して、その都度、対応の幅が広がり、スタッフともどもレベルアップを図れています」      とまりが良化したら、もっと決め手をアルインパクトがジョージライダーSに優勝したのをはじめ、オーストラリア、UAE、サウジアラビア、アメリカでも11回の出走歴があり、うち6戦で3着以内という良績を収めているが、これも確かな厩舎力の証明。周到な準備に加え、その条件下における最善の手立てを模索してきた。現在はタスティエーラとともに香港チャンピオンズデーを戦ったサトノレーヴが英国のニューマーケットに渡り、ロイヤルアスコット開催に向けて調整している。「異なった場所での体験は、人の視野を広げるだけでなく、馬の成長も促します。タスティエーラの未来へも、プラスに働くでしょう。まずは無事にと願い、引き続き健全な下地づくりを推し進めますが、依然としてギアを隠し持っている雰囲気がありますので、さらに競馬を覚え、気持ちと身体のま磨けると考えています。ダービーや国際G1のタイトルにふさわしい、幸せな引退後まで意識して、精一杯の愛情を注いでいきたいですね」セージを訊くと、馬に対して誠実な姿勢を貫く堀調教師らしく、こんな言葉が返ってきた。他国へもアンテナを張り巡らせ、リ最後に、会員のみなさんへのメッ「いつも温かいご声援をいただき、なにより励みになっています。レースとなれば、ハナ差、クビ差で勝負が決するのが常であり、いろいろな要素に左右され、なかなか思ったようにいかないのですが、どの馬も良い態勢で臨み、すばらしい走りをご覧いただけるように尽力いたします。日々の取り組みを通して、競馬への信用度を上げていきたいですよ。この業界を支えているファンの方々へは、主役である馬のありさまを正しく伝えたいと考えているなか、外部の見方は現場で接している感覚とずれが生じやすい。一般的な想像を超えるほど、馬は繊細であり、多様な側面を抱えていますからね。競技者がコメントできる他のスポーツと違って、メディアも予定調和の内容に沿い、一部を切り取って報道しがち。そのあたりは誤解を招かないような情報発信を心がけ、また、クラブのご協力を受けてレポートなどでも補っていきたいと思います。ご愛馬の奥深さに触れ、競馬ライフを一層、楽しんでいただけたら」香港で手にした輝かしい称号も遠き目的地への道標にして、堅実に歩を刻むタスティエーラ(イタリア語で楽器のキーボード)。この先も、心に響くメロディーを奏でることだろう。そして、同馬がもたらした貴重な財産を糧に、ますます技量を高める敏腕チームの仕事からも、目が離せない。Writer profile 15小平 奈由木 Nayuki Kodaira長野県出身。競馬専門紙の記者、法人馬主のレーシングマネージャーなどを経験のうえ、フリーランスの編集者、競馬ジャーナリストに。生産・育成現場からトレセン内まで知己を得て、多角的な視点によるドキュメンタリーを執筆している。「合同会社オフィスなゆた」代表。ホームページでも情報提供を準備中。https://www.officenayuta.comリアルインパクト(2015年ジョージライダーS)ネオリアリズム(2017年クイーンエリザベスⅡ世カップ)

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