て直しを図りました」放牧先での丁寧な下地づくりが実り、一段と連携も強化され、タスティエーラは復調を遂げる。以前の入厩時は細かった飼い食いが改善。繰り返し操縦性を確認しても、他馬に依存する面が薄れ、メンタルの充実もうかがえた。ウィークポイントとして抱える左トモや右前肢へは慎重なチェックとケアが継続されたが、歩様に悪化は見られない。しっかり負荷をかけながら、天皇賞・秋はプラス18キロの体重で臨み、2着に健闘する。「香港カップも敗れたとはいえ、収穫がありましたね。圧倒的な強さを誇るロマンチックウォリアーが相手。レーン騎手と、勝つための戦略を練ったうえでの先行策であり、自分のリズムに徹したら、差は縮まったでしょう。中間にドバイシーマクラシックの招待が届きましたし、大阪杯を経て臨む選択肢もありましたが、中東へ渡ったロマンチックウォリアーは防疫の制約上、QEⅡ世Cに出走できないとの情報(その後に特例で参戦可能となったが、不出走)を得て、春はここ1本にターゲットを絞り、万全を期す方向で、クラブやNFしがらき側と意見をすり合わせました」ただし、出国検疫を受けるのに際して、克服しなければならないハードルが待ち受けていた。堀調教師の手元には、ケンタッキーダービーを目指すルクソールカフェも所属。香港、米国へと2ヵ国に向けて移動する馬の使用期間が重複するため、1つしかない美浦トレセンの検疫厩舎は、いずれかの滞在に限られるとJRAより見解が示されたのである。2ヵ所の施設を有する栗東か、東京競馬場の国際厩舎に分散するよう、要請があった。できる限り境遇の変化による影響を排除するのが望ましく、馬のために美浦での共同受検を根気強く折衝する。「農林水産省の動物検疫所や動物衛生課に打診しても、前例がない措置への許可は簡単に下りなかったのですが、海外では衛生基準の厳しい国に合わせて検査を行えば、同じ箇所で要件を満たせます。香港ジョッキークラブ、香港政府に加え、チャーチルダウンズ競馬場の主催者、アメリカ農務省へ照会したところ、同時に行って差し支えないと力添えがありました。関わるオーナーと相談を重ねた過程で、競馬推進議員連盟会長の橋本聖子参議院議員からのサポートもあり、問題をクリアできたんです。晴れて成果へと結び付き、たくさんのご援助が報われました。たいへんありがたく思っています」2008年の香港ヴァーズ(ジャガーメイル、3着)を皮切りに、堀調教師は香港のG1に延べ20頭を送り出している。計6勝をマークしているだけでなく、15頭が3着以内に好走。同ステーブルには、長年に亘って蓄積しタスティエーラJune 2025 vol.28114馬名騎手キンシャサノキセキ四位洋文ジャガーメイルC・ウィリアムズキンシャサノキセキU・リスポリリアルインパクト★戸崎圭太ストロングリターン福永祐一リアルインパクト★J・マクドナルドドゥラメンテM・デムーロM・デムーロモーリス川田将雅R・ムーアモーリスR・ムーアモーリスJ・モレイラモーリスR・ムーアサトノクラウンJ・モレイラモーリスR・ムーアサトノクラウンM・デムーロR・ムーアカフェファラオC・ルメールカフェファラオ福永祐一サトノレーヴJ・モレイラ日付レース名2010年 3月28日高松宮記念2010年 5月 2日天皇賞(春)2011年 3月27日高松宮記念2011年 6月 5日安田記念2012年 6月 3日安田記念2015年 3月21日ジョージライダーS2015年 4月19日皐月賞2015年 5月31日東京優駿(日本ダービー)ドゥラメンテ2015年 6月 7日安田記念2015年11月22日マイルチャンピオンシップモーリス2015年12月13日香港マイル■2016年 5月 1日チャンピオンズマイル■2016年10月30日天皇賞(秋)2016年12月11日香港ヴァーズ■2016年12月11日香港C■2017年 4月30日クイーンエリザベスⅡ世C■ネオリアリズム★J・モレイラ2017年 6月25日宝塚記念2019年12月15日朝日杯フューチュリティSサリオス2021年 2月21日フェブラリーS2022年 2月20日フェブラリーS2023年 5月28日東京優駿(日本ダービー)タスティエーラ★D・レーン2025年 3月30日高松宮記念2025年 4月27日クイーンエリザベスⅡ世C■タスティエーラ★D・レーン※海外での7勝を含め、G1勝利は計23勝(Jpn1を除く)。■が香港での優勝レース、 ★はキャロットクラブ所属馬。堀宣行厩舎のG1勝利記録 細やかに重ねた愛情が奏でる珠玉のコンツェルト〜鍵─タスティエーラ クイーンエリザベスⅡ世カップ 優勝─琴高奏〜
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