ECLIPSE_202506_12-15
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ムーズなレース運びがかなわなかった故の結果。ゴール前の鋭い伸び脚に、明るい未来を予感させた。ところが、昨春は大阪杯(11着)、天皇賞・春(7着)と精彩を欠く。その後は半年間、ノーザンファームしがらきでリフレッシュを挟んだ。「3歳シーズンの疲れが尾を引き、健康体を取り戻せずにいたのが根本的な敗因。使って良くなる傾向を踏まえ、天皇賞・春へも続戦させましたが、馬に申し訳なかったとの思いが残ります。ムーア騎手が日本の仕上げについて、『ファクトリーみたい』と評したことがありましたね。もちろん、私たで以来、ダミアン・レーン騎手が格別の愛着を寄せ、遠征中も入念にコミュニケーションを取っていた。香港カップでスタートに危うさを感じたレーン騎手は、今回の出走にあたってゲートボーイの採用を進言。陣営も出国前からゲートボーイを配して練習を積み、コントロールの向上につなげた。「それでも馬はデリケートですので、慣れない居所で良好な心身を整えるのは難しく、香港で3戦全勝だったモーリスを除けば、サトノクラウンやネオリアリズム(クイーンエリザベスⅡ世カップ)も2度目の渡航で勝利。前回の経験がいき、すべての面でクオリティを上げられたと思います。普段から気候も重要なファクターと捉え、メニューに工夫を凝らしていますが、蒸し暑い実地での調整も想定通りに進みました。狙った舞台で、存分に能力を発揮したタスティエーラに、感謝するしかありません」   菊花賞とも2着を確保したタスティエーラ。オールマイティな才能を開花させ、JRA賞最優秀3歳牡馬に輝いた。有馬記念は6着だったものの、「状態はすごく良かった。ポジション取りが噛み合わず、残念でならない」と騎乗したムーア騎手が話した通り、スダービーの栄光のみならず、皐月賞、ちのスタンスは、決してそうではない。それぞれが持つ独自の個性に応じ、感情の機微まで察しながら、深い部分までアプローチしていかなければなりません。それに、刻々と変化するのがサラブレッドです。新たな懸念材料が表面化することも多々。うまく運んだ過去に固執せず、より細やかな現状把握に努めるとともに、先々を見据えて感性を研ぎ澄ませ、柔軟に方策を探っていく必要がありますよ。これまで身近で接してきたノーザンファームしがらきサイドへも率直にコンディションを伝え、私どもの考えについての理解も求めて、十分な期間を割いて一から立13

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