ECLIPSE_202505_11-13
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ことはありません。跨った印象はドッシリしていて、安定感があります。キャンター時の乗り心地も良いことから、今後の伸びしろが大いにありそうです。ただ、調教時の動きを見ると遊びながら走っていたり幼さが残っているので、そういった面の解消を目指しつつ、元から持っている良さを伸ばしていきたいと思います」と育成厩舎の担当者は話していた。それが春頃になると「大きな体躯の持ち主ですが、幼い部分が残っていることを鑑みてじっくり進めてきました。その甲斐あって、ここ最近は恵まれた馬体を余すことなく、しっかり使って動けるようになってきました」とコメントのトーンが変わり、成長を遂げているのがわかる。7月になるとノーザンファーム天栄(以下NF天栄)に移動し、翌月には美浦トレセン・奥村武厩舎へ初入厩した。「当初は数週前に入厩させたいと考えていましたが、輸送中の落鉄の影響で蹄が少し繊細になってしまったことから無理せず落ち着くのを待っていました。ひとまず、デビュー戦へというよりも、まず目の前のゲート試験を合格することから始めていきたいですね。初めての本州の夏を経験して堪える可能性もあるでしょうし、体調の変化に注意しながら調整を進めていきます」と入厩時、奥村武調教師はコメントしていたが、8月14日ゲート試験合格後にその心配が現実のものとなってしまう。右前脚の膝裏上に、わずかだが腫れが見つかったのだ。不安を取り除くために一度NF天栄に放牧へ出て、仕切り直すこととなった。見せた脚元や調教での走りから、ダートでのデビュー戦が11月22日の東京に決まった。レースでは立ち遅れて中団後方からの競馬となったが、早めに追い上げて2着。長くいい脚を使った。しかしレース後、右膝を気にする歩様が見られたためレントゲンを撮ったところ、骨折が判明。12月には北海道の社台ホースクリニックで骨片摘出手術そして10月27日に帰厩。一度不安をが行われ、長期休養を余儀なくされた。2戦目に臨んだのは7ヵ月後。デ         勝目を挙げ、5歳春には内田博幸騎手ビュー戦と同じ丸山元気騎手を背に、直線では一完歩ずつしっかり迫って初勝利を飾った。秋には荻野極騎手で2とのコンビで連勝してオープン入りを果たした。膝や球節の具合を見て、レース間隔を取りながらの出走だったが、5歳10月までに中央で14戦4勝の成績をあげていた。ただ、パワー型のフォーヴィスムには厳しいレースが続いていた。「条件的に地方の砂が合うと思いますし、馬のことを考えると、ある意味、まだ活力があるタイミングでの挑戦の方が好結果につなげやすいでしょう」(奥村武師)と、2023年10月に南関東への移籍が決まった。そこから、川崎の内田勝義厩舎所属馬として、外厩のミッドウェイファームでの調整が始まった。「最初に実馬を見たときに全体的なバランスの良さを感じ、この馬は走るだろうと思った。抜けて馬が良かった。中央で奥村先生が大事に使ってくれていたのが、一目でよくわかった」と内田調教師。交流重賞の12月14日、神奈川記念から、新天地でのスタートを切った。「昨年夏のスパーキングサマーチャレンジで、移籍後初勝利を御神本騎手が乗って挙げたあのレースが転機になったと思います」。こう語るのは、ミッドウェイファームの高木翔平マネージャー。ここからは、日頃調教を行っている高木マネージャーに振り返っていただこう。「テンで急かすよりも、少しためて、終いをいかす自分の形のレースをすれば、こんなにも強いんだということがわかった。それまでは前掛かりな競馬をしていたのですが、道中の折り合いが難しかったりとか、終いの脚がもうひとつで、勝ちきれないレースが続きました。優勝する前年の京成盃グランドマイラーズも狙っていたのですが、May 2025 vol.28012フォーヴィスム 京成盃グランドマイラーズ優勝─中央デビュー〜地方移籍、S1制覇の蹄跡を振り返る─

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