今年からS1競走へと昇格した京成盃グランドマイラーズが、3月11日の船橋競馬マイルを舞台に行われた。かしわ記念のステップレースでもあり、上位2頭には優先出走権が与えられた。中団から豪快な追い込みを決めた、2番人気のフォーヴィスム(川崎・内田勝義厩舎)。早めに先頭に立った1番人気のムエックスをゴール寸前で捕らえるクビ差の勝利だったが、4コーナーから縫うように伸びてきて、着差以上に強さを感じさせるレース内容だった。「終いの脚にかけていたので、道中はこの馬のリズムを1番に考えて乗りました。直線を向いてからの手応えがすごく良くて、なんとか交わしてくれるだろうと信じていました。使うたびに良い状態になっているので、感謝しています。かしわ記念に向けて、良い競馬ができてホッとしています」と、吉原寛人騎手は会心の勝利コメントの際に、今後の期待も口にした。「吉原騎手とも『テンには無理しないで、終いにかける競馬をしよう。雨が降って前残りの馬場だったとしても、それでも自分のスタンスを崩さずに、自分のリズムで行って終いをいかす競馬をしよう』と話していた。道中、前とは離れていたが最後はしっかりと脚を使って、差はわずかだったが、力のあるところを見せた。イメージ通りの競馬をしてくれた」と、内田勝義調教師はフォーヴィスムを讃えた。「厩務員バスの中から見ていて、3コーナーでまだ後方にいるのが見えて、これは難しいかなと思っていました。それが、しっかり間に合ってくれて…」と話を聞いていると、バスの中ですでに涙を流している瀬戸貴弘厩務員の姿が目に浮かぶようだった。そして、こう続けた。「中央の3勝クラスのレースを当時たまたま見ていて、『こんな馬がこっちに来ないかな』って言ってたら、本当にご縁があって自分のところへ来ることになって、不思議な感じがしますね。フォーヴィスムは2018年3月23日にノーザンファームで誕生した。父は2015年に皐月賞、日本ダービーを勝った二冠馬ドゥラメンテ。米国産馬の母アートプリンセス(母の父Officer)は米G2チェリーヒントンステークスで2着した実績がある。両親ともにMr.Prospectorの血をもつ血統だ。ノーザンファーム空港の育成厩舎で坂路コースに入りはじめた1歳11月にはすでに480キロ台もあったように、馬格のしっかりした馬に育った。年が明けると500キロを超え、「食欲は旺盛で、与えられたカイバを残すような11 Text: 中川 明美フォーヴィスム 京成盃グランドマイラーズ優勝─中央デビュー〜地方移籍、S1制覇の蹄跡を振り返る─
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