ECLIPSE_202503_7-11
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ファロンタイム計測を自動化できないか。山口シネマはこの課題にも1959年頃から取り組み、1965年に中央競馬の各場で正式採用となった。また、競馬場にはテレビによる映像放送が既に始まっていたが、台数が限られており、見られない人もいた。そんな中、1984年には東京競馬場のコース中央に、ある電機メーカーが開発したターフビジョンが登場。その後、中山競馬場や大井競馬場にも大型映像装置が導入された。山口シネマには大井競馬場以外の公営競技場から大型映像装置の打診があったが、ネックとなったのが価格だった。そこで山口シネマは、「動かせる大型映像」の開発をソニー9       と共同で研究。1988年、車の後部に大型ディスプレイを乗せる方式を採用したランニングビジョン(車載式大型映像ディスプレイ)が完成。南関東の川崎、船橋、浦和競馬場で採用された。当時、すでに常設の大型ビジョンがあった中山競馬場でも有馬記念などの大レースの日に、内馬場にランニングビジョンを設置したことがあったという。「内馬場にも多くの人が入っていましたからね。とても好評でした」と、当時のことを知る大久保大樹取締役は、懐かしそうに振り返っていた。ぐに決勝地点の映像を見られるという速攻性をデジタル化により実現したデその後、1988年にはゴール後すジタルビュアーが完成し(写真④)、地方競馬にて採用。1991年にはオッズや馬体重などの情報を得られるレース情報プリントシステム(オッズプリンター)を生み出すなど、技術開発を追求。1996年には写真判定がカラー化(写真⑤)。2014年にはカラーデジタルビュアー(CDV‐X1)がJRAで採用。2015年には、ファンサービス用場内映像とパトロール映像業務を行うために必要な大型中継車を導入(写真⑥)。山口シネマは公正な競馬運営に欠かせない会社として、確固たる地位を確立している。新潟直線1000mを映す車載カメラ新潟競馬場名物、直線1000mの迫力ある映像を撮影できる車載カメラ(写真⑦)を開発したのも、山口シネマ。この件に関しても、山口良成社長に伺った。「直線1000mのスタートは、スタンドから遠く離れていますよね。当初、この地点の撮影にはかなり苦労があり、何か良い方法はないかと依頼があったのです。レールの上にカメラを設置する方法や、空中にケーブルを張ってカメラを走らすなど様々試しましたが、うまくいきませんでした。そこで車にカメラを積み、馬と併走しながら撮影する車載カメラの開発に着手。そこに立ちはだかったのは2つの問題でした。舗装されている管理用道路を走るのですが、どうしてもカメラが揺れてしまう。そこで、揺れを吸収する台を特注しました。もう一つの問題はライブ映像を伝送しなければいけないのですが、その機械開発に数年要したことです」ドローンを駆使した撮影に挑戦昨年の中山大障害で、ドローンが撮影した映像が取り入れられたのをご存知だろうか?(写真⑧)。Xにはこれを見ていたファンからの「画期的!」というポストがあふれた。これまで関東の競馬場では昨年9月、中山競馬場のレースの輪乗りにおいてドローン撮影による映像が用いられたことがあったが、レース中にドローン映像を使用するのは中山大障害が初めて。これも山口シネマからの提案だった。第二業写真③当時の中山競馬場の場内テレビ山口シネマ 沿革1925年山口良吉初代社長が山口シネマ公司創立1949年山口式フォトチャートカメラ完成。各競馬場で採用1953年パトロールフィルムが中央競馬にて採用1954年 株式会社山口シネマ設立1962年ファンサービス用場内テレビ放送開始1965年 ファロンタイム計測装置完成。中央競馬にて採用1969年 中央競馬にてビデオパトロール業務を開始1976年 判定写真拡大装置が完成。中央競馬より順次採用1978年アルゼンチン、香港、アメリカ合衆国での事業展開(現在は国内事業のみ)1988年 ランニングビジョン(車載式大型映像装置)完成。地方競馬にて採用デジタルビュアーが地方競馬にて採用1990年 株式会社プラスミックに社名変更1991年 レース情報プリントシステム(オッズプリンター)完成。中央競馬各場と各ウインズにて採用1996年写真判定カラー化2002年 車載カメラ完成。中央競馬にて採用2006年 2.4GHz HDデジタル無線伝送装置、技術基準適合証明取得携帯電話向け競馬情報サイト「うまステ」を開設2008年 カラーデジタルビュアー(CDV―X)完成。ボートレースより順次採用2009年 株式会社山口シネマに社名変更2011年 ハイビジョンカラーパトロールシステムが中央競馬にて採用2014年 カラーデジタルビュアー(CDV―X1)完成。中央競馬にて採用2015年大型中継車の導入創立90周年。本社を千代田区岩本町へ移転2025年 創立100周年

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