関係者のおひとりから、キャロットファームが所有するドゥレッツァ(牡4)がG1インターナショナルS(芝お聞きしたのは、同競走の第1回登録締め切りを2週間ほど後に控えた、6月上旬のことだった。一報を耳にした筆者は、「ついに来たか!」と思わず膝を打った。いまや世界各国の主要競走で日本調教馬の活躍が見られる時代となったが、そんな中で、いささか高いハードルとなっているのが、競馬発祥の地・英国のレースである。アグネスワールドによる00年のG1ジュライC(芝6F)制覇、ディアドラによる19年のG1ナッソーS(芝9F197y)制覇と、大きな成果をあげた遠征もあったが、その一方で、強固な壁にあっけなく弾き返され、もっとやれるはずなのにと、歯噛みする思いで結末を見守った戦いの方が遥かに多かった印象がある。例えば、英国競馬の華と称される王室主催の「ロイヤルアスコット」では、前出のアグネスワールドが00年のG2キングズスタンドS(芝5F)で2着となったのが、唯一の好走例となっている。欧州12F路線の最高峰の1つとされるG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)でも、06年にハーツクライが勝ち馬ハリケーンランから1馬身差の3着という大健闘を見せたが、彼以外にこのレースに挑んだ5頭は、いずれも5着以下に敗れていた。欧州で日本調教馬が苦戦を強いられる時、その背景にあるのは概ね3つのファクターだ。 1つは、秋の凱旋門賞の例を持ち出すまでもなく、降雨による馬場の悪化だ。一般的にいって、日本の競馬場よりは草丈の長い欧州の馬場が、大量の水気を含んでしまうと、そういう路面で走った経験値が乏しい日本調教馬が、本来の力を発揮することは難しくなる。 2つめは、直線競馬への対処。日本では1200mのレースをコーナーのあるコースで行うが、欧州は1600mのレースを直線コースで行うこともままある。コーナーで息を入れるという習性が身についている日本調教馬は、道中で息を入れるタイミングを逃し、これも苦戦の要因となる。最後のファクターは、馬場にある起伏だ。ゴルフコースと同様に、英国では大半の競馬場が自然の起伏を活かしたレイアウトになっており、上ったり、下ったり、うねったりしている走路が、戦いの場となる。ザ・ダービーの舞台となるエプソムなどは、道中の高低差が、一般的なビルの高さにして13階に相当する40mもあり、王室所有のアスコットでも、向こう正面の谷底とゴール前との間には22mの高低差がある。近年の日本調教馬は、JRAの施設でOctober 2024 vol.27310 10F56y)参戦を視野に入れているとドゥレッツァが挑んだ至高の10F戦─2024インターナショナルS─Text: 合田 直弘
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