何より経験が必要な総合馬術は、当然ながらオリンピックレベルに達するまでに長い時間がかかる。最年長の大岩は20年以上、1番短い戸本でも8年間、ヨーロッパを拠点にトレーニングと活動を続けてきた。その自負を込めた〝初老ジャパン〟である。彼らがこれまで経験してきたすべてのことが、これからの日本の総合馬術を後押しするに違いない。彼らの活躍について、馬術経験者の池添学調教師に話をお聞きした。 「総合馬術チームの活躍は素晴らしかったです。インスペクションを棄権した時はダメかと思いましたが、そこからの復活劇はすごかったですね。僕は明治大学馬術部出身で、現役時代に大岩さんはコーチでしたし、戸本君は僕が4年生の時の1年生で、合宿所でに後輩です。明治の仲間が国を背負って頑張っている姿には感動しますし、彼らの活躍はとても嬉しいです。正直、僕が生きているうちに、馬術でオリンピックのメダルを獲る日が来るなんて、思っていませんでした。日本の馬術は強くなりましたね。また、オーストラリアからは元競走馬が出場していました。総合馬術や障害馬術では、サラブレッドの活躍が広がっていくと思います」かげで、4人の選手はもちろんのこと《馬術》というスポーツの認知度も上がり、興味を持ってくれた人がたくさんいた。また、選手へのメダルだけではなく馬にリボンが贈られることや、馬のお尻の毛を逆立てて日の丸や桜の模様をつけることなども話題になり、〝馬と選手が力を合わせて一緒に行うスポーツ〟だということを知ってもらうことができたのは、とても嬉しくありがたい。ポーツであり、特に地元フランスチームが登場した時の観客の熱狂ぶりはすさまじかった。日本の競馬が長い年月は1年間相部屋でした。北島君はさら総合馬術チームの銅メダル獲得のおヨーロッパでは馬術は人気の高いスをかけて発展し、今は世界と肩を並べているように、馬術をもっと多くの方に知っていただき、楽しんでいただきたいと切に願っている。池添調教師のコメントにもあったが、パリオリンピック総合馬術競技に元競走馬のボールドベンチャー(とにも触れておきたい。競走馬名はヘル・オン・ホイールズ(3戦したが勝ち鞍はない。コンビを組んでいるシェナー・ロウィングスは、ボールドベンチャーが6歳の時に気に入り、血統も良かったことから、実際に見ることなく1000ドルほどで購入した、と語っている。2018年にワンスタークラスの国際競技にデビューして、その後はオーストラリア国内で開催される競技で出場クラスを上げていってフォースタークラスで優勝するまでになり、2022年にイタリアで開催された世界選手権にも出場した。さらに、日本が団体出場枠を逃した2023年のオリンピック地域予選における個人成績は1位で、オーストラリアの出場枠獲得に大きく貢献。そして今回のパリオリンピックではリザーブとして現地入りしたが、クロスカントリーで途中棄権したオーストラリアチームの馬に代VENTURE・heels) W Facebookの馬齢14歳)が出場したこで、オーストラリアの競馬で広告で立ち姿の写真を見てBOLD Hell On わって、最終日の障害馬術競技に出場したのだ。ボールドベンチャーは、〝馬術競技で頑張っている元競走馬がいる〟という次元を超えて〝活躍している馬が、実は元競走馬だった〟というレベルに達している。オリンピックでのパフォーマンスも堂々としていて、他の馬たちと比べてまったく遜色なかった。ネット上で見つけた立ち姿の写真から彼の才能を感じ取り、ていねいに育ててきたシェナー・ロウィングスの慧眼と努力に感服した。このコンビのこれからの活躍にも注目したい。(日本馬術連盟 北野あづさ)速報ReportSeptember 2024 vol.27212©Stefan Lafrent北島は自ら走ってビクトリーラップ(ウィニングラン)を盛り上げた最終日の障害馬術競技に出場したボールドベンチャー4人が起こした奇跡─総合馬術日本チームがパリオリンピックで銅メダル─
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