ECLIPSE_202402_07-2106
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シーザリオとその子供たちに対し、私は非常に強い縁を感じています。またシーザリオと出会い、彼女のレースを実況させてもらったからこそ今がある、それくらいに思っています。私にとって、シーザリオは生涯忘れられない、特別な存在です。最初に実況を担当したのは、3月のフラワーカップでした。先行策から同じ勝負服のスルーレートを楽々交わして重賞初制覇を飾ったシーザリオ。同じ日、若葉ステークスを前走で負かしたアドマイヤフジが勝利、翌日にはそこで4着だったダンスインザモアがスプリングステークスを勝利したことから、「もしかしたら凄い馬なのかもしれない」と思いました。次の担当は5月のオークス。道中スローペースの中、後方の苦しい位置取り。どうなるか?と思った最後の直線、漆黒の馬体が、同じ勝負服のディアデラノビア、内から抜け出したエアメサイアをまとめて差し切り、鮮やかなクラシック制覇。その強さに心からしびれました。前回、当コラムで高橋洋介氏が記していましたが、その後、グリーンチャンネルから声がかかり、アメリカンオークスを現地から実況担当することになりました。ハリウッドパーク競馬場、向正面の奥にある厩舎エリアで関係者を取材した際、鞍をつけずに曳き運動する彼女を間近に見ました。競馬場では見るからに強そうなスーパーウーマンにしか見えませんが、ここで見た彼女は、体形も競馬場で感じるシャープなラインではなく、ややコロンと丸みを帯びて見え、そして何より目がトローンと。初めて見た普段のシーザリオの姿に、とにかく驚きました。ですが、レースではいつもの彼女、いや日本で見せていた以上とも言える圧巻のパフォーマンス。カリフォルニアの青い空、異国の競馬場に、これまたその馬体、勝負服がとにかく美しく映え、あの直線、ゴールのシーンは、今まで見てきたシーンの中でも、最高に美しい瞬間だったと言っても過言ではありません。レース直後の福永騎手、角居調教師を放送席にお迎えし、その興奮、喜びを日本のファンに直接届けられたことも初めてであり、素晴らしい経験をさせていただきました。また暮れの香港でも現地からの中継に呼ばれ、ハットトリックの香港マイル勝利をお伝えすることができ、ここでも角居調教師に放送席から生でお話いただくことができました。以後、海外中継には頻繁に携わることになるのですが、05年のアメリカンオークスが、全てのきっかけになった気がします。このように、私はシーザリオの全重賞勝利を担当させていただき、その数年後、今度はその子供たちです。エピファネイア(菊花賞)、リオンディーズ(朝日杯FS)、サートゥルナーリア(ホープフルS、皐月賞)の3頭、彼らのGI勝利をこれだけ実況させていただきました。母で2度、子供たちで4度、こんなことそうそうあるものではありません。そして私自身、最後のダービー実況と決めて臨んだ2019年、サートゥルナーリアが勝ってくれたら、シーザリオの息子たちで3歳牡馬クラシック、2歳牡馬たらと思っていたのですが、残念ながらそれは叶いませんでした。しかし実況を通じて、こんなに縁のあるファミリーは他にいません。色々な経験を、そして成長を、シーザリオファミリーからさせてもらった気がします。また会員の皆様と、パーティーの場で多数ご一緒させていただけたことも、全てはそのおかげです。シーザリオのご冥福を心よりお祈り申し上げます。GI完全制覇だと思い、是非実現できJune 2021 vol.23328Columnist profile 中野 雷太 Raita Nakano1974年愛知県出身。1997年ラジオたんぱ(現ラジオNIKKEI)にアナウンサーとして入社。これまで牡馬クラシック3冠レースをはじめ、国内外のビッグレースを数多く実況してきた。「日本の素晴らしい競馬を世界に届けたい」今はそんな夢を秘かに抱いている。16年前、若すぎて今とは別人です(笑)       ~Forever CESARIO~vol.4"競馬実況"を通じた 私とシーザリオファミリー

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